ゆず塩

若草物語のゆず塩のネタバレレビュー・内容・結末

若草物語(1994年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

【総括的な感想:『若草物語』と『続・若草物語』を丁寧に映像化した作品。】

『ストーリーオブマイライフ 私の若草物語』(グレタ・ガーウィグ監督 2019年)のネタばれも若干あるので注意してください。

原作は『若草物語』『続・若草物語』『リトル・メン 第三若草物語』を読了済み。
映画は『ストーリーオブマイライフ 私の若草物語』(2019年 グレタ・ガーウィグ監督)を視聴済み。
2019年版が好きすぎるので、どうしてもそちらと比較してしまう。

【一言あらすじ:小説家を夢見るジョーとその姉妹たちの物語。】または【ジョーが恋愛するまでの物語】
ルーイザ・メイ・オルコットの『若草物語』と『続・若草物語』を映画化した物語。

【テーマ:家族愛と女性の自立】
原作についてちょっとコメント。女性が家庭に入るべきか、女性は自立すべきかの2つの天秤が元々原作にあったと思う。『続・若草物語』では、ジョーも最期家庭に入るので、「女性の自立」感はちょっと弱まる。原作発表当時は十分だったんだろうけど、2023年現在で読むとちょっと違和感もある。
この映画は原作をほぼそのまま映像化していて、それ故に原作の持つ違和感がそのまま出てきてる気がする。小説という文字でゆっくり咀嚼していたものが、2時間の映像になってよりその違和感は強くなった感じ。違和感と言うか、物足りなさというか。
あと1994年の映画ということで、当時の映画感覚がこんな感じだったんだろうなって印象。今のフェミニズム的な表現とだいぶ異なると改めて感じました。

【感想】
今作は、原作を時系列通り、そして原作とほぼ変わらずに映像化しているのではないでしょうか? 原作がうろ覚えなんだけど。脚色という意味では2019年版の方が色々と変更している印象。時系列ごちゃ混ぜはもちろんだけど……ジョーが寂しくてローリーのプロポーズを断ったのを後悔する所とか。ラストとか。物語の組み立てとか。2019年版が異常だったんだなーって今作を見て改めて思いました。
エイミーのローリーに対する気持ちは、今作も2019年版と同様に原作と違いますね。原作だとエイミーって子供のころからローリーのことそこまで好きなわけじゃないと思うんですよ。今作では、近所のお兄ちゃん的な好意を向けてる。

<2019年版と比べての感想>
・今作だと、エイミーが幼少期から美術に熱心というよりも『お金持ちと結婚する』と言うことにベクトルが向いている印象。美術がダメでお金持ち(フレッド)との結婚を選んだ、と言った変化は余り感じなかったかな。
・ジョーが思っていたより女性感強め。お転婆なんだろうけれども、やっぱり女性的な印象が強い(個人的にはジョーって短髪か、長髪でも髪をまとめている印象なのです……勝手な印象だけど)。顔立ちがキレイすぎると言うか、表情が大人しすぎるというか。ジョーももうちょっと身勝手でいてほしいと思ったかな。ローリーやベア先生に真正面から意見をぶつけに行ってほしかったかな。自分の中で2019年版のイメージが強すぎる。
あと、ローリーも、ベア先生も、見た目として屈強な男性感が強いんですよね。2019年のティモシー・シャラメはひょろひょろで、ジョー(シアーシャ・ローナン)と背の高さも同じで丁度良かったんだけど。ローリー役のクリスチャン・ベイルとジョー(ウィノナ・ライダー)が並ぶと、ローリーが強すぎるんですよ……怖い。映画界の女性感と同時に、男性感も変わったんだろうなって思いました。

・2019年版は、『女性の自立』がかなり前面に出ている様子で好きなのです。でも今作は、ローリーやベア先生との恋愛関係描写が主にある。恋愛映画の要素が大きい気がするのです。ラストも、ベア先生との関係が結ばれて終わりだし(2019年版は解釈が2つできるよう作っていてズルくて秀逸!)。今作の方が原作に忠実なんだけど、2019年版の方が作者の精神を引き継いでいるのではないかと。

・原作の『若草物語』と『続・若草物語』を比べると『若草物語』の方が楽しいエピソード多いんですよね。『若草物語』が子供時代の話だからなんですが。今作は時系列通りだから、前半が楽しくて、後半はちょっとしんみり。テンションが違う。
あと今作は、「何の話なのか」という意味でパッケージングとしてはあまりわかりやすくない。ベア先生の登場が遅くて、ジョーとベア先生の恋物語とは言いづらく……。ローリーとジョーの恋物語でもなくて……でいいのか? 実はローリーとジョー、2人の人生の話かも? 悪いと言いたいわけではなく、原作がそうだからこうなっているだけなんだけど。
2019年版は、時系列がごちゃ混ぜだから、楽しいとしんみりが交互に来て、最期まで作品の印象が変わらなくて良かったかな。あと、2019年版はジョーの小説家としての結末、エイミーやローリーの恋の結末、という予想する結末が序盤からわかってていい。

・物語全体として、ジョーのエピソードに尺を使いたかったのかな? ローリーがクリスマスプレゼントとしてごちそうを送る所をカットしたので、ローリーとマーチ家の接点が薄くなった印象。秘密結社ごっこ(?)でローリーが入ってくるのがちょっと違和感。あと、ベスがローレンス氏の家にピアノを弾きに行くところが無いのもカットされてて。急にベスにピアノがプレゼントされててコレも違和感。そういう意味で、ジョーの要素が薄く所はカットしているのかなーって印象でした。

・俳優さんについて。キルスティン・ダンストのエイミーが可愛い。年齢の都合で途中で変わっちゃうのは仕方ないけど。2019年版のフローレンス・ピューは通しでエイミーをやっててある意味凄い。……西洋人も童顔に対する認識が変わっているのかしら? 「カワイイ」の文化と言うか、時代で容姿に関する感覚が変わってそう。

・本編と関係ないけど、フンメルさんがロクデナシになってて驚いた。
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