神判

SOSタイタニック/忘れえぬ夜の神判のレビュー・感想・評価

4.0
お話しにタメがないタイタニック。

1997年版は、船が沈むまでに様々な下準備をしていました。
タイタニックが単なる豪華客船ではなく、人々にとって夢を叶えるための象徴であること、海は冷たく危険であること、救命ボートが少ないこと、男尊女卑と格差社会の歪んだ日常。
それをジャックとローズのラブロマンスを交えて、自然に伝える巧みな演出と愛の力により開放され救済されていくローズ。

このタメがあったからこそ、タイタニックが沈む恐怖をより肌で感じたり、緊急事態の時まで上流階級が優先される不条理さや、カオスな状況でも自分の役割をまっとうする人間の凄さ、愛し合う二人の生と死の対比が効果的にいきていました。

本作は出港してから20分たらずで氷山に衝突します。タメが少なくキャラ立ちした者もいないので、あとは淡々と船が沈んでいきます。

ドラマ性が極めて低いですが、この作品が駄目だと言うことではありません。この作品は、2時間あります。普通に考えたらタイタニックを題材に2時間にまとめようとしたら、誰が製作しても同じ感じになると思います。

1997年版のタイタニックはベタな演出だと言われることもありますが、本作と比較すると1997年版がいかに優れた演出で、通常考えられない尖った構成になっていることが分かります。

本作が優れた点は、1997年版に大きく影響を与えて貢献していることです。1997年版は、明らかに本作の演出やキャラクターを一部そのまんま使用しています。半世紀後にも影響を与え、更なる名作を生み出す元になった、歴史的な作品であることは間違いありません。
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