ある歌手のリハーサル風景やライブ映像を、素材の持ち味を最低限の演出で下手なライブビデオの演出より魅力的に引き出すペドロ・コスタ監督の卓越した才能に感嘆する一作。そしてストローブ=ユイレリスペクトな演出(ピアノの使い方などあからさまに『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』を意識している)が中途半端な感情移入や虚飾を許さないストイックな作風となり、プロの歌手や演奏家たちの緊迫感あるやりとりを生々しく伝えてプロの世界の空気を堪能させてくれる(でもあまりにも説明をしないのでちょっと眠気を誘う)。
他のペドロ作品同様カメラの構図や白黒の映像の使い方かスタイリッシュかつかっこよくて、これだけ見ていても充分に面白い。でも唐突な日本のおばちゃん出現にはちょっと笑ってしまった(エンディングのテロップを見る限り日本のライブ映像を一部使用しているらしく、そのとき寄った喫茶店で撮影したらしい)。
ラストに流れる『ローズ』という歌も決まっていてインパクトを残す。