青山祐介

何も変えてはならないの青山祐介のレビュー・感想・評価

何も変えてはならない(2009年製作の映画)
3.5

『何一つ変更を加えず、かつすべてが違ったものとなるように』
 ロベール・ブレッソン「シネマトグラフ覚書―映画監督のノート」筑摩書房

19世紀、絵画と写真の間でその芸術的価値について、さまざまな論争がたたかわされてきました。そして20世紀、それ以上の難題が提起されましたが、その問題に決着がついたとはいえません。すなわち<映画は芸術であるのか>という問題です。
現在のような『モンタージュ可能な芸術作品の時代に』あっては、すべてが複製され編集され大衆化されてしまいます。ヘラクレイトスの『目覚めているひとたちは世界を共有しているが、眠っているひとはそれぞれに自分の世界をもつ』という真理は、変更せざるをえなくなります。この芸術に対する現代の状況を理解するために一本の映画と基本的な書物の助けをかりることにしました。

ペドロ・コスタ監督・撮影「何も変えてはならない(NE CHANGE RIEN um film de Pedoro Costa com Jeanne Balibar)」 2009年 ポルトガル=フランス モノクロ
(女優・歌手ジャンヌ・バリバールの音楽活動を記録したドキュメンタリー映画。
ペドロ・コスタの独自の眼差し=カメラで綴られる愛の歌といわれる。)
『写真家がシャッターを切る。それは口づけに似ている(H.Sieker)。カメラを回す。それは愛の行為に似ている。』

ヴァルター・ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」1936年 野村修訳 岩波書店
『画家による映像が総体的だとすれば、カメラによる映像はばらばらであって、そ の諸部分は新しい法則に従って寄せ集められ、ひとつの構成体となる。』
青山祐介

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