梅田

何も変えてはならないの梅田のレビュー・感想・評価

何も変えてはならない(2009年製作の映画)
4.5
やたら光量の少ないモノクロの画面、しかもスタンダードサイズ。延々と定点で回されるカメラが何の説明もなくとらえ続けるのは、どうやら女性アーティストのレコーディング風景らしい。
「ペドロ・コスタという作家はなんかすごいらしい」程度で、他に何の予備知識もなくレンタルしたこのドキュメンタリー映画、想像以上にすごかった。DVDで観始めた僕は、数分でまず部屋の照明を消し、延長ケーブルを介してテレビにヘッドフォンをつなぎ、音量を2倍に上げ、スタンダードサイズからはみ出してテレビに映る白い帯を布で覆い隠して、稚拙ながらも「擬似映画館」に切り替えた。同じフレーズをひたすら繰り返すレコーディング風景に釘付けになっていると、たとえばシャーマニックなクラウトロックを聴いているような気分になる。反復は陶酔をもたらすし、その場合、情報量は少ない方がいい。字幕の文字までが邪魔だと感じたのは初めてだった(一度観終えたあと、字幕をオフにしてもう一度再生した)。
予告編にも使われているけど、タバコの煙だけを残してマイク(とカメラ)の前からジャンヌ・バリバールが消えるカット、美しすぎて震える。
梅田

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