IMAO

何も変えてはならないのIMAOのレビュー・感想・評価

何も変えてはならない(2009年製作の映画)
3.5
優れた俳優は立っているだけで画になる。言い変えるならば、優れた俳優を撮っているだけで良い映画が出来てしまう。これは正にそういう映画。
ジャンヌ・バリバールはフランス映画が好きな人ならお馴染みの俳優だが、彼女の歌手としての活動をペドロ・コスタが撮る。一般的にはドキュメンタリーというジャンルで捉えられる映画だろうが、ペドロ・コスタはそういうジャンル分けを許さない作家でもある。実際、彼はこう語っている。
「ドキュメンタリーとフィクションのあいだに線を引くことのできたじっさいの映画作家など、誰ひとりとしていなかったと思うのです。自分はドキュメンタリー映画を作っているのだろうか、それとも劇映画を作っているのだろうか。どこで両者は隔てられているのかなど、私は今まで一度たりとも考えたことはありません。そのような問いは存在しない。私たちが撮っているものは生なのです。」
この言葉の通り、彼が撮る映画は素人を使って何年もかけて撮った映画もあれば、この映画のように役者の歌手としての活動を撮ったものもある。そこにはプロの役者も素人の境も無ければ、明確なストーリーさえ存在しない事がある。そこにあるのは生きている人間だけだ。だが、その存在そのものが魅力的である限り、それは映画になり得るのだ。そんな迷いない彼の自信がこの映画には現れているように思えた。
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