Siesta

PicNicのSiestaのネタバレレビュー・内容・結末

PicNic(1996年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

CHARA×浅野忠信×岩井俊二というケミストリー しかも、その時代感と2人の年齢も含めて、これは再現不可能な圧倒的な空気感を纏っている 塀の上を歩く白い服の浅野忠信と、黒い服、黒い傘のCHARAの2人なんて、いわゆるサブカル的な“お洒落”のイメージそのままで、もしかすると、今の時代になっても日本のクリエイターはこの映像、イメージを追いかけ続けているのではないかとも思えてくる たとえ、この作品を見たことがなくても また、精神病院から抜け出すというのも気づいたらヌルッとという感じはジャームッシュのダウンバイローも彷彿とさせる 浅野忠信はそのジャームッシュ作品のミステリートレインに出ていた永瀬正敏に憧れを抱いたことが俳優業のきっかけとも考えると、不思議な繋がりも感じる
内容自体はあってないようなもので、精神病院から抜け出して塀の上をひたすら歩くというもの 観念的でアバンギャルドな映像表現も頻出して、これはこの尺で良かったなと思った これより長いと多分もたない 偽物の教師がチャックを下ろすと枝分かれした陰部が顕になり、ツムジの上で用を足すという悪夢 ここはもうリンチのイレイザーヘッドの域 彼自身はここでも女医からの搾取も受けていて ただ、これは現実なのか、とも
サトルは塀から落下して死ぬ 首の折れるゴリっとした音が生々しい でも、2人はもう2人の世界に行ってしまって彼の死には気付かない ただ、彼らの場合、別に塀から降りても良いんだよな でも、降りない ルールだから それならOKだということにしておいてあるから 彼らの中にも病院への恐怖があってのことなのか この塀の上を歩くだけなのに、タイトルがピクニックはセンスあるよなぁ
雨の中での2人の殺しの告白 雨のせいで聞き取りづらいんだけど、それさえも演出になってしまうマジック 見えない憂鬱の雨が可視化される ココが世界が終わる時は私が死ぬ時というセリフがラスト、彼女の自死として無惨にも美しく昇華される 彼が苦しむ世界を終わらせるために、私が死ぬしかないのね、と めちゃくちゃ思考回路メンヘラなんだけど カラスの羽が飛び散り、彼女を抱き止めるツムジ 鬱なエンドの無惨な美しさ 精神的な救いを求めた果てに、という無惨さなのに、不思議と絵としての美しさが勝つという
CHARA使っていて歌メインではないし、ただ、救いのない世界で救いを求めるという展開は、極めて岩井俊二的だし、CHARAのこの声の雰囲気、キリエのうたに抜擢されたアイナに通じるものを感じるし、こういう雰囲気が一貫して好みなんだろな
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