半兵衛

私の殺した男の半兵衛のレビュー・感想・評価

私の殺した男(1932年製作の映画)
4.0
こういうシリアスな題材でも、テーマの重さはあれど上品に軽やかに仕上げてしまうルビッチ監督の手腕に感服。それでいて戦争により心を傷を受けた主人公や彼が殺した兵士の家族の心情を深く描いているのが流石。

冒頭第一次世界大戦でのフランスによる勝利パレードのシーンで祝福する市民や兵士の合間にさりげなく片足の兵士を出したり、祝砲を戦争の大砲の音と勘違いし狂乱する兵士の様子を入れて戦争の欺瞞を静かに叫ぶ演出に唸らされる。そして戦争での体験で精神的に追い詰められた主人公が懺悔をする場面での、狂乱した主人公から目から殺した兵士の目に移行する回想シーンの迫力に圧倒される。こういう古びない巧みな演出が出来るのが超一流の監督と言われる所以なのかも。

主人公が自分の罪を告白しようとドイツ人の被害者の実家に来るも、家族が彼のことを友人と勘違いし嫌いなフランス人であるけれど彼の優しさに触れ仲良くなっていく展開は軽やかな語り口によるオブラートに包まれている分主人公の苦悩が一層深まる。

残酷な選択をした主人公と被害者の婚約者による、美しくもビターな結末が胸に染みる。主人公の弾くバイオリンの音色も美しさと悲しみを一層輝かせる。

フランス人が来たことを噂する人たちの様子や、フランス人と親しくする一家に忠告する知人に対してユーモアに満ちた言動でやり込めたりするところにルビッチらしさを感じさせる。
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