Keigo

私の殺した男のKeigoのレビュー・感想・評価

私の殺した男(1932年製作の映画)
4.4
やっぱり…!やっぱりだ!!
『極楽特急』で初めてエルンスト・ルビッチ監督作品を観て感じた直感は間違ってなかった!絶対好きな監督だと思ったんだよなー。

この作品はたしかgenarowlandsさん( @lovemovies2030 )のレビューからclipさせていただいた記憶。大感謝!

あらすじはシンプルで、第一次大戦直後、戦時中にドイツの敵兵を自らの手で殺めてしまったフランス人青年の苦悩と贖罪への歩みが描かれている。

反戦映画であるのは間違いないけれど、戦場での悲惨さを克明に描き出すことで反戦を訴えるものではなく、残された遺族や生き延びた人々の葛藤や苦悩に焦点を当てることで反戦のメッセージを浮かび上がらせる上に、罪と贖罪、嘘と偽善、そういった人間の普遍的な態度にまでも手を伸ばしている。

シリアスな主題でありながらも、街で噂する人々や値札を貼り変える洋服屋の店主など、トーン&マナーの範囲内で多少のユーモアも差し込まれていて全体に重い雰囲気になりすぎず、作品時間も77分とすっきりまとめられていて軽やかだ。その辺のバランス感覚も素晴らしいと思う。

役者達の演技は今観ると多少芝居じみたところもあるものの、それぞれの人物の内面がクリアに表現されていたし、そもそも脚本がよく出来ていて台詞のその先を考えさせる強度があると思う。映像も洗練されていて、古さを感じて集中力を削がれることもなく没入出来る。

ウォルターの父の酒場での一喝に痺れる。
こんな大人ばかりなら、戦争は起こらないはずだ。これは偽善だろうか。夢見心地の博愛主義者だと揶揄されるのか。

罪を償うとはどういうことか。
全てを打ち明けて許しを乞うことが、贖罪なのか。それともただ自分が楽になりたいだけなのか。自分の中に苦悩を抱え続けることで、罪を償うことが出来るのか。
そもそも彼は、罪を犯したのか。
罪を償うべきは、誰なのか。
Keigo

Keigo