【第35回カンヌ映画祭 パルムドール】
トルコのユルマズ・ギュネイ監督が獄中から指揮を出し撮り上げた労作。コスタ・ガヴラス『ミッシング』とパルムドールを分け合った。
ユルマズ・ギュネイは二枚目俳優として多くの映画に出演したが、1960年にクーデターが起こると、執筆した小説が共産主義的だとして投獄、二年後に出所してから監督デビューした。
自身がクルド人ということで本作もクルド問題を描いた作品になっている。「神の名のもとに」という美名に隠れた極端な男尊女卑、家制度の闇を描き出す。
体を売ったという理由で8年間自宅で監禁される女、トイレでイチャついただけで「公然わいせつ罪だ!」とリンチされそうになる夫婦、そもそも犯罪を持ちかけたのは妻の兄なのに生き残った男を「家の恥だ」となじり追い返す妻家族…
極度に保守的でとことん男尊女卑なトルコ社会を描き出す。そりゃ政府の目の敵にされるわなという作品。
重く苦しい話だが、雪やクルド人の住む山間部を映す撮影が非常に美しい。
他の方も言うように全員背格好の似た髭のおじさんなので区別がつきづらい上に、シーンごとに場所が細かく変わるので「これは誰の何の話だっけ?」と混乱するのは確か。もう少し整理してほしかった。
ただやはり獄中から指示を出したとはいえ、直接監督、編集できなかったのにこのヘヴィー級の作品ができたというのは凄いことだ。
ぜひDVDなどでリマスターしてもらいたいし、他の作品もソフト化してほしい。製作状況を抜きにしても素晴らしい作品だと思う。