CINEMAと暮らす

路(みち)のCINEMAと暮らすのネタバレレビュー・内容・結末

路(みち)(1982年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

第35回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作

1980年の軍事クーデター後のトルコ。仮出所を許された受刑者たちを描く。
 投獄中に妻のジネが売春婦になってしまったセイットは妻と息子を連れて雪山を歩く。セイットは妻に裁きを与えようと考えていたが、凍死寸前の妻を見て、考えを変える。しかし、妻は赦しを請いながら凍死する。
 強盗で捕まったメメットは逃亡の際に、妻の兄アジズを犠牲にしたことで、妻の家族から憎まれている。メメットは兄の死は自分のせいだと妻に告げるが、妻は気絶し、家族からはより憎まれるようになる。妻と子どもと逃げようとするが、電車内でSEXしていることがバレてしまい、公然猥褻の罪で捕まる。乗客からの批判は過激さを増し、2人は射殺されてしまう。
 
 
監督のユルマズ・ギュネイは獄中から指示を出してこの映画を制作した。エンドロールにはこの作品に関わった人々への感謝が述べられている。
登場するトルコ人が、ほぼ全員ヒゲを生やしており、人物の識別が難しい。なので、途中からただその場で起きていることを浴びるようになってくる。
タバコを吸う子どもたち。お盆いっぱいのパン?を頭に乗せている子ども。近所で当たり前のように起きる銃撃。草原を駆ける馬。売春宿の女たち。バスの中で寂しい歌を明るく歌う子どもたち。兵士たちの詰問。国境を越えられず死んだ人々。
そこには当時のトルコがある。

監督はクルド人で、クルドの文化を映したためにトルコでは10年以上上映が禁止されていたらしい。統治のために不都合な文化を消すことが許される政治体制だと喧伝するようなもので、市民の反発が強まるだけなのに、なぜ検閲をするのか。武力で権力を握ろうとする人間の考えは理解に苦しむ。