櫻イミト

路(みち)の櫻イミトのレビュー・感想・評価

路(みち)(1982年製作の映画)
4.0
カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した伝説的なトルコのロードムービー。監督のユルマズ・ギュネイは何度も政治犯として入獄。本作は仮出所の度に撮影を進めて完成。

1980年トルコ。島の刑務所の囚人たちに5日間の仮出所が与えられた。3人の囚人それぞれの帰郷を中心に5日間を追う。
・入所中に身を売った妻を家の名誉のため死に追いやらなければならない男の話。
・クルド・ゲリラの兄の死に直面し自らの進路に苦悩する男の話。
・かつて銀行強盗の際に仲間を見捨て、その弟に命を狙われることになった男の話。。。

列車の車窓から見える見慣れないトルコの風景に旅情を掻き立てられる。そして日本とはまるで違う三者三様の故郷の状況。イスラム教の厳しい戒律(掟)、家族の強い結びつきと名誉の重さ、日常的なゲリラ闘争。厳しい現実と美しい風景がドキュメンタリータッチで描かれる。映像も演出もリアルな生活感が保たれていて印象深い。特に、雪山に子供と妻を連れていくシーンは凄かった。不勉強のため詳しい背景はわからないものの、圧倒的な異文化体験をしたような、まさしく旅をしたような感覚を覚えた。もう少し勉強して観直してみたい。

全く触れたことがない世界と生き様に、人間としての価値観を揺さぶられる傑作。

※ギュネイ監督は、ジュールス・ダッシン監督の社会派映画(1947年「真昼の暴動」か?)を観て映画監督を志したとのこと。
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