三樹夫

回路の三樹夫のレビュー・感想・評価

回路(2000年製作の映画)
3.5
『リング』のインターネット版あるいは『リング』の黒沢清版といった作品。一応はホラー映画のジャンルだが、明らかに何らかのメタファーだろというのがプンプンするし、そのことについて言及しているんだろうなという思わせな台詞が思いっきり出てくる。
幽霊がいっぱいになってしまい、さらに回路がつながったことで幽霊が溢れてきているという舞台設定。植物を売っている会社の社員が会社に来なくなった。心配した同僚が家に行ってみると在宅しており変わったところがなさそうだが突然自殺してしまう。一方大学生がインターネットに接続したところ変なサイトにアクセスしてしまう。大学のパソコンお姉さんと知り合いになったので相談したところ興味を持ったようだが、徐々におかしくなっていく。

一つはコミュニケーションについて言っているだろうなというのは伝わる。ネットというものでつながりやすくなったのかもしれないが、結局ディスコミュニケーションで孤独感を感じる。もう一つは哲学的な何かで、幽霊の存在に触れることにより死を意識し、死についての云々といった感じ。これが軽薄な大学生を通して浮かび上がってくる。
ちなみに軽薄な大学生は加藤晴彦で時代を感じる。何故加藤晴彦?とは思い、オーディションや黒沢清のオファーで出演しているとは思えず、ネットにアクセスする時の加藤晴彦の一人芝居とか見てられなかったが、軽薄そうな大学生感は出ていた。ずっと生きていたいとかこいつ絶対『火の鳥未来編』読んだことないな。さらに女性の衣装がノースリーブが9割なのでそこの所も時代を感じる。軽薄な大学生加藤晴彦はパソコンお姉さん小雪としか喋っておらず、一人で大学内をウロチョロしてばっかりで友達いなさそうだし、孤独で誰かとつながりたくてネット始めた感があったというかネットやれば誰かとつながれるんだろみたいな安易な考えで始めてそうだし、死とかそんな難しいことわっかんないとバカそうな感じもあり、今観るとパソコンの操作が原始人かとなるが、ごく平凡な普通の若者というキャラクターとして描かれているんだろう。

ジャンプスケアではなく真綿で首を締める演出であり、じっとりした暗い感じで描かれる。むしろジャンプスケアは興味ないのかあるいは苦手なのか、空の瓶が倒れるシーンはやたらぎこちなかった。とにかく陰気な雰囲気を作っており、冒頭から半端じゃない曇天を見せてきて陰気な気持ちにさせ、そこからはずっと薄暗い陰気なまま話は進んでいく。図書館でさえもそれじゃ文字読めねぇだろというそんなワケない薄暗さになっている。
部屋の外のガラス越しに人物を撮ったりなどキャラクターに寄らず突き放している。黒い影がヌメーと現れるなど、怖いというより気持ち悪いだったり不気味という感じで、影響を受けた『エクソシスト3』の方法論を実践しているなと思う。特に下手にはけて戻ってきてドーンのシーンは最『エクソシスト3』シーンだった。何かが起こりそうというので緊張を高めていき、キャラクターの横移動での恐怖演出がそのように思った。
飛び降りのシーンはこれカット割れるんだろうなと思っていたら地面にそのまま落ちたぞとなるショックシーンでどうやって撮ったんだとなるが、バンジージャンプの要領で命綱をつけ下にマットを敷いて上から飛び降りたカットと、地面に激突するところは2メートルぐらいの高さから飛んで地面にあたるカットとをブルーバック合成でつなぎあわせている。
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