Sari

吸血鬼のSariのネタバレレビュー・内容・結末

吸血鬼(1932年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ドライヤーの初トーキー映画。
セクシャリティとエロティシズムの観点からヴァンパイアというテーマを扱い、卓越した幻想的な映像を駆使した1932年という時代を考えれば見事な作品である。後の所謂ジャンル的「吸血鬼映画」と一線を画し、映画における視点や連続性を構築するための約束事を踏襲せず、独自の手法でストーリーを展開させている。死体の視点から見ていると思われる棺が長旅をするシーンや幽霊のような影が納屋で踊るシーン、女吸血鬼がか弱い妹に注ぐ淫猥な視線、粉挽き屋に逃げ込んだ邪悪な医者が粉に埋もれて窒息し謎の死を遂げるシーン、ストーリー本体と不気味なほどマッチしている長い夢のシーンなどでは、この上なく神秘的なムードを漂わせた映像に圧倒される。
シネマテーク時代の座席を再利用した劇場の最前列中央席で、音響が以前と比較するとクリアに感じられた。全てスタジオで制作されたという今作のサウンドトラックを堪能した。
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