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吸血鬼のギルドのレビュー・感想・評価

吸血鬼(1932年製作の映画)
3.3
【独り歩きした吸血鬼のとある伝説】
■あらすじ
悪魔や吸血鬼の研究に没頭する青年アラン・グレイ。
パリ郊外の村を訪れた彼は、奇妙な老人から託された小包に導かれるように、とある古城にたどり着く。そこで老人が殺されるのを目撃し…。

そぎ落とされた台詞、数々の撮影トリック、そして緻密に重ねられた音響が、緊張感のある恐怖を作り出す。これは幻なのか、現実なのか。映画史上屈指の美しい悪夢体験を。

■みどころ
カール・テオドア・ドライヤー セレクション vol.2より。
吸血鬼を題材にある一族の危機に立ち会った青年のお話。

なんでも撮影中にスタジオと監督が揉めて制作されてから公開までに2年かかった挙句、配給会社に40分以上短くされてナレーションも勝手に追加されるなど数々の揉め事があった作品らしく、製作にも支障をきたす不運な姿はフー・ボー「象は静かに座っている」に近い匂いを感じる。

そんな本作はサイレント映画からトーキー映画に駆けてどちらの良さも取り入れたアートフィルムに仕上がった作品で実験要素の多い作品だと感じた。
「光と影」の演出をふんだんに取り入れた作品ではあるが、実体のない怖さをサイレント映画特有のテンポと共に表現していて、そういった部分が興味深かった。
怖さを医学という隠れ蓑としている部分も霊的存在への映し方も面白く、吸血鬼伝説…伝説の中で怖さだけが独り歩きして正体が見えない部分の居心地の悪さを表現する所に魅力があると思う。

とはいえ映画として面白いかと言われると「光と影を使った対比描写」「実態のない怖さ」が全面的に押し出されていたり、空間表現もワンパターンで思ったよりハマりませんでした。
スタジオと揉めたり尺を短くしろ言われた影響故もあるし、「奇跡」「ゲアトルーズ」を観た後なのもあるが「光と影」の対比で言えば「ミカエル」の方がより効果的に映していると思う。
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