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吸血鬼のatomaのネタバレレビュー・内容・結末

吸血鬼(1932年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

教養ポイントを貯めるためにドライヤー特集上映で鑑賞。ほんとうは『奇跡』も観たかったが、つまらない理由で見逃してしまった。

トーキー最初期のホラー映画として名高い本作だが、現代の観客たる自分は、どうしても、白黒映画を骨董品を眺めるようにしか観ることが出来ないところがあり、ホラー映画としての真っ当な怖さを感じることは難しかった。

とはいえ、宿屋で眠る主人公アランのもとに謎の老人が現れるシーンのモンタージュは、90年以上も前(!)にすでに現代的なホラー映画の文法を確立しているし、アランが宿屋を抜け出してから老人が銃殺されるまでの一連では、水面にだけ写る影、スコップで何かを掘る男の逆再生、影だけが歩く義足の男など、豊富なアイデアで不気味さを産み出していて見事と言う他ない。
同時代のユニバーサル・ホラーと比べても完成されたモダンさがあり、多分、現代のしょうもないホラー映画で本作より怖くない作品はいくらもあると思う。

他にも、吸血鬼と化しつつあるレオーネのクローズアップ、棺に納められた男の主観ショット、粉挽き小屋の巨大な歯車とのカットバックで粉に埋め殺される(嫌な殺され方)村医者など印象的なシーンはたくさんあり、十分に楽しめた。(24/5/15)
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