ヘラルドスクエア

イージー★ライダーのヘラルドスクエアのレビュー・感想・評価

イージー★ライダー(1969年製作の映画)
3.2
ユルくてしみじみ物悲しいロードムービー。
カウンターカルチャーの殻を被った評判に惑わされるな!
過激かと思いきや、ホントはかなりレイドバックな作品。

デニス ホッパーさんの異才ぶりが花咲きました。
オープニングタイトルに流れる「ワイルドで行こう!」だけがやたらとカッコいい。
あまりに有名な伝説のシーン。
これに敵うのは『サタデーナイト フィーバー』のオープニング「ステイン アライヴ」くらいでしょうか。
ほとんどの人が、この冒頭3分間を見たらあとは見なくて大丈夫です!
このイメージに騙されて、うっかり見るとがっかりすると思います。
良くも悪くもオープニングがこの映画のイメージを決定してしまいます。
フルメッキのパンヘッドのハーレーに、リジッドのチョッパー、シーシーバーを装着して星条旗ペイントのジェットヘルメットでまたがり三拍子のエンジン音を奏でる。
現在のハーレー乗りにとっても憧れのスタイルを完全形態で見せてくれます。

主人公二人がプッシャーなだけで、実はワイルドでも反体制的でもなくて、ヒッピーですらなくただの根無し草。フーテンのなんとか…。
陰キャコミュ症、負け犬の二人。
米南部でもてはやされた価値観、レイドバックをまとった二人。
レイドバックは要するにユルい。「まったり」とか「もったり」とか「だり〜な」って感覚でしょうか。
ですが冒頭のシークエンスでは、ロックで疾走だっ!て観客を勘違いさせるんですよね。
罪深い。
1969年公開当時ハーレー乗りのイメージは、自警団(暴走族)ヘルズエンジェルスが、ストーンズのライブで集団暴行する殺人事件があったりで、凶暴で尖ったサブカルと深い繋がりがあった頃。
そこにヒッピーコミューンやらドラッグカルチャーを混ぜられると、つい体勢に反抗する若者たちって語り方になりがちです。
ややこしいことに本作自体がアメリカンニューシネマの金字塔だったりするので、またまた勘違い続出。
しかし本質は尖った反抗精神ではなくて、かなりレイドバックに寄った作品です。
ニューオリンズまで南部の荒野を巡るツーリングという設定もあり、自然回帰というかダウン トゥ アースというか、ずっとチルアウト&スローライフな時間と映像が続きます。
このあたりの展開も、当時のフォークロックやスワンプ、サザンロックの系統が新しくてイケてたという時代背景を飲み込まないとハテナ?なんだか退屈となります。

アメリカのカウンターカルチャーの尖った象徴としてハーレーがあったことは間違いないと思います。
でもその後、世の中のハンドルを握ったのはもう一方のカウンターカルチャーである、レイドバック、自然回帰の方でした。
スティーブ ジョブスさんの初期Apple社はレイドバックでフリーセックスなヒッピーたちに大量に製品を売りさばいて成功を納め、ジョブスさん自身もコミューンの一員だった事実は、まさにそういうことなんだなと感慨深いものがあります。