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プレデターのdm10foreverのレビュー・感想・評価

プレデター(1987年製作の映画)
3.8
【あんしんパパ】

と聞いて直ぐに「ピ~~ン」と来る方はそうとう「キテレツ」です(笑)
かといって、今回のレビューで「はじめてのチュウ」に触れるわけでもありませんが・・・。

何が言いたいのかと申しますと、「シュワちゃんの存在感」が作品のジャンルすらも変えてしまったという現象についてなんですね。

これ、一応ジャンルとしては「SF」「アクション」となってはいますが、実際に作品を観ればわかる通り結構「ホラー」な作りになってるんです。
だって「宇宙人による問答無用の無差別殺人」の話しですよ。
しかも、殺した人間の頭蓋骨をキレイに抜き取ってトロフィーのように飾ってるんですよ。
もう完全に「無差別×猟奇殺人」じゃないですか。

じゃあ、何故それが「アクション映画」になるのか?
それは「シュワちゃん」がいるからに他ならないのです。

そもそも論なんですが、実はシュワちゃんは序盤から人間なんて相手じゃないんですよ。
森の奥深くに陣取っている敵のアジトを発見して攻撃するっていうくだりからこの物語は幕を開けますが、もうメチャクチャでしょ。
「フォーメーション」だの「後方支援」だの「援護射撃」だの「退路確保」だの「本部への連絡」だの、全くお構いなしでひたすらマシンガンやショットガンをぶっ放しまくる。
後からこっそり狙う卑怯な敵にはナイフを投げて「そこに立ってろ!」とニヤリ。

いったい「相手がどれくらいの武器を装備しているのか?」とか「どれくらいの勢力なのか?」とか、知らずに突っ込むのはあまりにも危険だよ・・てのはぶっちゃけ「野暮な突っ込み」なのです。
何故なら、シュワちゃんの目的は「CG不要の派手な爆破シーン」と、「その中でひたすら撃ちまくる自分」を撮りたいだけなので。

だからね、冷静になって考えてみると、この作品でプレデターが殺した人数よりもシュワちゃんが敵のアジトを襲撃した際にメチャクチャに撃ち殺した数のほうが多かったかもしれない。
つまり登場人物(モブ)からしてみたら、どのみち殺されるんだろうけど、ある意味「バケモノよりも怖い奴=ホラー」なんですよね

そうなんです。
この作品は「無慈悲な宇宙人の狩りの標的とされてしまった哀れな地球人の逆襲」ではなく、「地球人ってウサギ並に弱いって聞いたから軽めの装備でいったら、一匹だけグリズリーも混じっていたじゃないっすか!それ聞いてないっすよ!!」っていうお話しなんです。

軍隊だろうがレンジャーだろうが、基本的に人間がどんな装備をしたところでプレデターに敵うはずかないのに、それが武器はおろか上半身裸で肉体美を見せ付ける余裕すらかましてる時点でシュワちゃんだけステージが違ったんですね。つまり「もはや人間ではない」ということ。
しかも木で倒すって・・・。
ヘタしたら強すぎるシュワちゃんがハンデを与えて戦ったのかよというくらいの勝ちっぷり。

普通ならあんな無慈悲に殺戮を繰り返すバケモノが出てきた時点でゲームオ-バーだし、それなりの装備と知恵と運がなければ倒せないってのがセオリーのところを、最終的にはほぼ素手で倒してしまうシュワちゃん。
そして、そこにはどんなにグロ濃い目のホラー要素が強い作品であっても、どことなく「安心感」がついてまわるような不思議な感覚。
何故ならそこに「人間以上バケモノ未満」のシュワちゃんが出ているから。

「名作」というカテゴライズが合っているかどうかはさておき、ここまでこの作品が長く人々に愛される要因ってなんだろうか?って考えてみる。
特別「カルト的要素」があるとも思えない。
シュワちゃん以上に「プレデター」というキャラクター(造詣も存在感も)が秀逸だったというのも勿論あると思う。
でも、それ以上に全編を通して「撃って」「跳ねて」「怒って」「泣いて」「ちょっと葉巻咥えて」という『シュワちゃん七変化』が存分に楽しめる内容だったっていうのも大きいんじゃないかなと。

・・っていうのも、
この作品が作られたのは、あの「ターミネーター」から3年後。
それまでも彼は何本か出てはいたけど「パッとしないキン肉マン」的な存在でしかなかった。
(一応「コナン・ザ・グレート」はあったけどね)
そして一躍その名を知られることになったのが「ターミネーター」だった。
しかしそのお陰で付いてしまった「シュワちゃん=無機質な怖いキャラ」というイメージ路線で行くのか、「もっと幅の広いアクションスター」の路線で行くのかの岐路でもあったんじゃないかな。
「名前が売れたからこそ」の長期的戦略的な意味で。

そう考えるといろいろと感慨深いものがあるな~って。
ターミネーターのシュワちゃんは「人間離れしていて怖い」だったのが、その後の作品のお陰で「人間離れしているからこそ頼もしい」にスイッチした。

そしてそれらがなければ「トゥルーライズ」や「ラストアクションヒーロー」のような作品は生まれなかったし、「ツインズ」や「キンダガートン・コップ」なんかも生まれなかっただろう。
もっと言えばカリフォルニア州知事にだってなれなかったかもしれない。

ある意味では「ターミネーター」をうまい具合にフックに使って、いい意味で自分の幅を広げたのがこの頃のシュワちゃんの作品だったのかな~なんて。

それにしても、やっぱり玄田哲章さんの声は合うわ~。
にしても、玄田さんってシュワちゃんの声だけじゃなくて、スタローンやスティーブン・セガールの声もやってたのね。
「お見事」の一言です・・・。
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