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ハプニングのpikaのレビュー・感想・評価

ハプニング(2008年製作の映画)
3.5
再鑑賞。
バタバタと人が大量に死んでいく事件に対して「なぜ」「どうやって」など謎に対してドラマを求めてしまいがちだが、シャマラン特有のズレた演出の影に隠れたメッセージは結構面白くて、再鑑賞して冷静になるとシャマランは大真面目なんだろうなという真摯な姿勢とそれを作品にしてぶつけた心意気に素直に心打たれた。

上手いのが、不可思議で興味をそそる設定と目に見えない不気味さや不穏な緊迫感などのシャマラン必殺の妙技だが、惜しいのもまたシャマラン特有な演出のせいと言うか、意図的な奇抜さが逆にフィクション過ぎて虚構のドラマとして受け止めるゆえ、何か原因や答えを求めてしまって観客が無意識にスッキリできる「結論」を期待してしまうところにあるような。

ホラーぽいビックリ演出や、観客の感情を煽るような不穏な演出、マーク・ウォールバーグの深刻めいたドアップの多発で若干滑稽に見えてくるんだけど、滑稽に見えてしまうのではなくわざとやっていて、本人は大真面目なのに他人は吹き出してしまうような、どんな感情を持てばいいのか混乱してしまうチグハグさが独特奇異で魅力なんだけど否定的にも捉えられてしまうという諸刃の剣。


作品の大筋を担うメッセージ以外にも自己の成長や関係性の修復など、映画作品では言い尽くされたような印象だが、ドラマとしての興味の引き込みも含め着眼点としては十分に面白いし、終わり方もいい。
深そうで浅い印象になってしまいがちだが、再鑑賞すると結論への期待という概念を頭から離して、フラットな心持ちでシーンひとつひとつをじっくり堪能できるところでようやくシャマランの本質に追いつけたというか、滑稽で笑かせてくるけど大真面目なSF映画であるし、そんなにお金かけずCGも使わず、脚本と演出だけで不気味な世界の終わりを描いた、監督の作家性がこれでもかと爆発している個性的な傑作だと思う。
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