半兵衛

生き残った者の掟の半兵衛のレビュー・感想・評価

生き残った者の掟(1966年製作の映画)
3.0
いくら原作者が『冒険者たち』を気に入らないとはいえ、同じ年にこんなパラレルワールド的な続編を発表しなくても…。確かに『冒険者たち』には欠けていた犯罪者たちのリアルな生態や彼らの無骨な生きざまがここではストレートに描かれているが、それに重点を置きすぎているため肝心のお話がすごいゆったりで緩慢な印象に。そしてひたすら地味なため通好みな作品となってしまっている。

前作ではリノ・ヴァンチュラが演じていたキャラクターを『穴』の囚人役で知られるミシェル・コンスタンタンが演じているが、単なるいかついおっさんで華がない。そんな彼に助けられる娼婦も三十手前の若さを失いつつある女性とこの作品に似合ったキャラだが、それでも結構な美人なのはさすがフランス。

脱走した娼婦を追いかけるアクション的なやりとりが凄い淡々としていて拍子抜けする、そりゃ確かに現実では映画みたく激しい派手なアクションなんかやるわけないのだけれどここまで徹底すると盛り上がらないというか。一昼夜かけての銃撃戦やら、決着をつけるためのお互いナイフを持った死闘もシチュエーションは面白いけれど画としては成立していない。おまけに変な撮影(相手が暴力を受けた際にその顔をひたすらアップで撮る)を繰り返すのも作品に珍妙さをもたらす。

でも舞台となるコルシカ島などの風景を美しく捉えた映像や、裏社会にいる登場人物たちの空気感は見ごたえがあって個人的には嫌いではない。ただそんな空気を大切にしすぎたためが後半のちょっとしたどんでん返しの作動を疎かにして衝撃を発生させることが出来なかったのが惜しい。

それでも当時のフランスでは結構評価されたのか、この作品で監督デビューしたジョゼ・ジョヴァンニはその後コンスタントに映画監督の仕事をこなしていくことになる。そして何本かで『冒険者たち』の主人公を演じたアラン・ドロンと組むことになるのが不思議な縁を感じてしまう。

ロバが人を襲うという珍しい場面があるが、とぼとぼと走るロバと必死に逃げる女性という二つの画を無理矢理モンタージュしているので全然緊張感がない。
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