とにかく世界観が最高すぎる。
特撮もの、ミステリー、日本の伝統美、青年の絶望と狂気、心中物、いろいろな要素がこれほど見事に調和した作品は後にも先にもないはずだ。
当時結婚して復帰したばかりの八千草薫さんの内面の激しさが美しさを際立たせている。心情によって変化していく着物やメイクと、活発な女性新聞記者の洗練された洋服の陰陽の対比も素晴らしい。
黒澤映画の常連、土屋嘉男さんの狂気と哀しさを感じる演技は、オペラ座の怪人ファントムを思わせるもので大変魅了された。
最後の見せ場の創作舞踊「情鬼(じょうき)」、振付のセンスの良さもとにかく際立っている。
[振付・若柳 美東理樹わかやぎ みどりぎ ]
細かい設定を思いきり省くことで鑑賞後も人物の背景を観客に想像させてくれる作りもよかった。
DVDでは八千草薫さんの音声解説の特典もついており、2度楽しく味わうことが出来る。
ライターで火をつける瞬間の八千代さんの「うわぁ〜…」の声が可愛らしかった。
この作品は八千代さんにとってどういう作品でしょうか?のアナウンサーの質問に、
「それまでより一歩大人になったっていうか、いろんなことがあって結婚したってこともありましたけど、そういうのを少し、そこで変わってきたんじゃないかなっていう気がしますね」
発言がラストシーンに調和していたのがとても印象的だった。