もめん豆腐

落下する夕方のもめん豆腐のネタバレレビュー・内容・結末

落下する夕方(1998年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

昔むかし江國香織さんと村山由佳さんはとても流行っていたな〜とぼんやり思い出して観てみた。あてくしは桐野夏生さんが大好きでそっちには無縁。恋愛?なにそれ?な書籍が好きだけど、映像化された江國香織さんの作品は日常の切り出しが好きで『スイートリトルライズ』も面白かったから世界観は受け取れてるはず。
これは98年の作品らしく原田知世ちゃんのメイクはしっかりつり上がり気味の細眉。そうそう、みんなこうだった。右へならえしたあてくしももう眉毛は生えてこない。カムバック眉毛!知世ちゃんもひろ子ちゃんも角川のふたりとも顔も声も透感感が半端なくて、セリフが聞き取りづらいのはご愛嬌。いくつになってもかわいい知世ちゃんがセックスしようと跨った時は、心で例えようもない声があーーーって出た。原作では8年、映画では4年暮らした男が突然出ていくとなったら、そりゃあ様々なドロドロした感情が戦いだすよね。どうせならど派手にケンカして別れるか、手ひどく振られる方がまだマシなんだよな〜。だけど振る側の、出来るだけ穏便に別れたい気持ちもわかる。リカの頭と心の整理がつかない状態を、丁寧な生活を続けることで何とかバランスを保とうとする感覚は女性ならではなのかもしれない。繰り返し出てくるカレンダー、室内に飾られてるぐい呑みや観葉植物に機織りなど、暮らしを楽しむ女性なんだろうなと感じさせる描写がいくつもあった。まな板もちゃんとした木の分厚いまな板で、これをちゃんと手入れするの大変なんだよなとポンコツは尊敬した。
舞台は参宮橋かな?あの踏切はまだあるのだろうか。観ながら、参宮橋駅2DKがいくらくらいするのか調べてみたらやっぱり結構するよね。で、何よりも改めて菅野美穂さん、うまいよな〜と感嘆。ちゃんと破茶滅茶だし、ちゃんとかわいいし、ちゃんと心を奪われる気持ちがわかる。歳が近くてイマイチ良さがわからなかった渡部篤郎さんも、中年になった今観ると見た目もかわいくて、ふたりの間を行ったり来たりする優柔不断ささえも許せそうな気さえする。これも良き経年変化よ。
唐突に自殺が盛り込まれてほんの一瞬、え?とは感じたものの、すぐにああと取り込めた。理由は10年以上前に加藤和彦さんが亡くなった時、

今日は晴れて良い日だ。
こんな日に消えられるなんて素敵ではないか。

と遺していて、あの日の驚きは今も忘れられないのに、不覚にも腑に落ちてしまったから。
晴れた気持ちのいい日に死を決める人もいる。きっと華子も加藤さんも希死念慮との戦いの日々だったんだろう。本人の心のうちにとって、唐突でもなんでもないに違いない。
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