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落下する夕方のkomoのレビュー・感想・評価

落下する夕方(1998年製作の映画)
4.0
リカ(原田知世)は8年同棲していた健吾(渡部篤郎)から、唐突に別れを告げられる。
そして1人きりになった部屋に、なぜか華子(菅野美穂)という女が転がり込んでくる。その人物こそがリカたちの別れの原因であり、健吾が現在恋をしている相手だった。
やがて華子を追って健吾も訪れるようになり、奇妙な三角関係が始まる。


江國香織先生の原作ファンです。
恋敵と同居することになるという変な筋書き。現実ではなかなか起こり得なくて、最後まで見届けてもやはり取り留めのなさを感じるお話。
それでも登場人物の感情の瑞々しさにゆったりと浸れるのが江國作品の魅力です。

長年連れ添った恋人に突然フられてしまったリカは、凍った湖の切れ端に取り残されているよう。
その小さな切れ端へ、『寒いから一緒にいようよ』とでも言わんばかりに、華子が乗っかってくる。
リカと健吾がいた氷を割ったのは、その華子なのに。

清廉とした原田知世さんに、小悪魔的な菅野美穂さん。
2人は対称的ですが、対称的でありたくてそうなっているわけではなく、自分として生きているだけ。そんなナチュラルさを漂わせる世界観。

人間、自分自身への問いかけやらで不安や寂しさを抱えている。恋敵同士だろうが、それぞれの持つ人間的な寂しさは同じ。
あの人も私と同じように寂しいのだ、と認めることは、悔しいことでもあり、心強いことでもある。
他人に同調するということの幸せを教えてくれる作品です。
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