RyoS

A.I.のRyoSのレビュー・感想・評価

A.I.(2001年製作の映画)
3.6
母の愛を求めるようにプログラムされたAIが主人公なのだが、親の愛を求めるように遺伝子的にプログラムされている人間も同じなんじゃないかと。

AI、特に機械学習は、何かしらの指標に対して最適になるような出力をするようなモデルである。そのような出力をするために、色々な出力を試してどれが指標を高くする出力なのか学習するのである。例えば囲碁のAIであれば、指標は勝利確率、出力は打ち手、指標を最大化するような出力が選ばれる。この指標や出力はいかようにも設定できるため、指標を「母から受ける愛が最大になる」、出力を行動と設定すれば、母の愛を求めるような行動を取る主人公のようになる。

一方人間も遺伝子に組み込まれているように本能的に親を頼ったり、恋をしたり、子孫を作ったりする。それもプログラムの一種であり、その遺伝子レベルで組み込まれているプログラムをコンピューター上で再現できたら、もう人間とAIの違いは無いのではないか。プログラムが遺伝子にあるのかコンピューターにあるのかの違いでしかない。

犬や猫、馬や家畜など、餌を与えて調教しているが、それも「餌がもらえる」という指標を最大化するような行動をするようプログラムされていると言える。

人間ほどの知能レベルに達するにはまだ時間がかかるだろうが、一番のポイントはどこまで抽象的な指標を設定できるか、なのかもしれない。「餌がもらえる」より「母から愛を受ける」方がより抽象的であり、プログラムで組み込むのは難しいし、「自分が幸せになる」といった指標はさらに抽象的になる。人によって幸せの基準が異なるという点もまた難しい。

そんな一人ひとりの多様性こそ人間を人間たらしめ、生物を生物たらしめているものなのだろう。

カメラワークとか、キューブリックを意識してるなと感じる部分も多々あるのに、スピルバーグ作品になってる。子どもの描き方が完全にスピルバーグ。
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