ユカリーヌ

バタフライ・エフェクトのユカリーヌのネタバレレビュー・内容・結末

バタフライ・エフェクト(2004年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【過去に観た映画】

《バタフライ・エフェクト》とは、「ある場所で蝶が羽ばたくと地球の裏側で竜巻が起きる」という、初期条件のわずかな違いが将来の結果に大きな差を生み出すというカオス理論の一つ。
<公式サイトより>

タイムスリップもののSFなんだけど、サスペンス要素も
あり、ちょっとスリラー的でもある異色作品。

でも、これは究極のラブストーリーだ。
献身的な愛にあふれ、Mゴコロを大いに刺激してくれた。

まずスピード感があり、テンポがいい。
タイムスリップする道具が「日記」というのもいい。
ページを開くと文字がゆらめいてすーっと過去に戻る
というシンプルさがいい。

そして、現在に戻る時がひたすら痛そうだったり苦しそうだったりする。

ショッキングなシーンや痛いシーンが多く、
うわあ~とかきゃあ~とかって叫びたくなるくらいだったけど、主人公に同化してた。


好きな人の幸せのためだけにひたすら過去と現在を行き来するけなげな主人公エヴァンがたまらない。
ほんとは、落ち着いてもっと上手く立ち回ればうまく転がっていったのにと思うとこもある。

エヴァン一人が、不幸へ不幸へと導いているような気もするのだが……。
とにかく自分のことより愛する人、友達のためにと我が身を省みない不器用なエヴァンに共感する。


でも、みんなが幸せになんてなれない。
誰かが幸せになると誰かが不幸で、きっとそれは過去を変えようとも変えなくとも……。

過去が変わるたびに人も変わっていく。
その変貌ぶりが見事。

それぞれの役者が見事に何パターンものキャラを演じている。
子役と大人になった時の役者がものすごく似ているためすんなりと受け止められる。

ラストはせつないけど、それが一番いいのかもしれない。

ラストより、途中のお風呂でエヴァンが死のうとして
「一人では死ぬこともできない」というところは一番せつなくて、せつなくて泣けた。


【2回目。プレミアム・エディションの感想】

最初に観た時はストーリーを追うのに一生懸命だったが、
二度目となると細かいところまで見えてくる。

登場人物たちの細かいしぐさやセリフが全て意味を持つことを再確認もできた。
後は演出効果なども余裕で楽しめた。
そして、より深いせつなさを感じることができて、またまた泣いてしまった。

改めて せつなかったシーンは
エヴァンがケリーと一番幸せな展開になった時、
エヴァンが「朝、目覚めたら君の笑顔があった。
一生離したくないと思った」というところ。
悪い展開を知っているだけに、この幸せの絶頂のけなげさがじんわりとしみる。

そして、別の人生で一番エヴァンがつらい展開になった時、ケリーは親友の恋人になっている。
二人の幸せそうな様子を横目で見つめるエヴァンの表情がたまらない。
そして、「僕はこの世の誰よりも君を愛してると言ったら、変わるかな」とエヴァンがケリーに言うところは泣ける。
困ったような顔のケリーがまたせつない。

劇場版と全く同じラストなんだけど、少しだけシーンを
つけたしたバージョンも二つ収録されていた。
「ストーカー編」と「涙のハッピーエンド編」だ。
もうこのタイトル観ただけで想像がつくと思うのだが、
これは却下されて当然だなと。
それだけオリジナル劇場版のラストが素晴らしいかを改めて感じられる。
でも、たったワンカットを入れるだけで全く違ったものになるし、セリフを加えることで
テイストもガラッと変わるのに驚く。

そして、全く異なる別エンディング版も観るが、これはちよっと話のテイストが変わりすぎ。
あまりにあっけない。
それまでの話が全て水の泡になりそうだから、使用しなくてよかったと思う。

監督の解説もよかった。
カットシーンや実際のシーンを見せながら、解説してくれるので、解りやすく、とても勉強になった。
脚本執筆に六年もかけたというだけあって、綿密に計算された構成、申し分ない伏線、細かい演出効果、それぞれのキャラの設定など うなるとこばかり。

監督が語ったポイントやこだわりの部分を箇条書きにちょっと書いてみる。
随所にこだわりが見られる。

・問題作なので最初は商業路線じゃなかった。
・物語は複雑だが、短い方がいいと、2時間20分を1時間50分にした。
・観客はオトナのエヴァンが一番見たいから、子役シーンはかなりカット。
・冒頭15分はカメラを固定していたが、話が進むにつれカメラの動きが増加。

・エヴァンの子役は名子役。無邪気な子とオトナがのりうつった子の両極端の演技を熱演。

・母役も一つの役が状況によっていろんな役をしぐさや表情で
 うまく演じ分けている。

・医師は機械的ではなく人間くさい医師にしている。
・タイムスリップした時、悪夢のイメージを出すところは
 “銀残し”という手法で色の彩度を落とし、逆に夢のように
 幸せな所は彩度をあげている。
 フラッシュバックは光の効果を取り入れたりハイライトを
 入れて現実との区別をつけている。

・危険なシーンが近付いたり、過去を喚起させる、悪いことの前触れなどでは必ず「赤」を入れている。対照的に父の精神異常を暗示させるシーンには「緑」を入れている。

・脚本的には多くセリフをつめこんだが、映像になった時は 
 全てセリフで説明しなくてもわかるのでセリフはかなりカット。
 セリフも5~6パターン用意して、投票で選択したりした。

・犬を焼くシーンは子役の感情が難しいところなので細切れにせずに一気に撮った。ケリーの傷が今後の人生に大きく影響するので強調されている。

・ケリーの父の地下室のシーンなどシュールな世界を出すためにカメラのシャッター速度をあげている。

・怖いシーンの後にはちよっとしたジョークやエッチなシーンを入れてたりしてるがあまりにおふさげになるので、カットしたとこが多い。
ユカリーヌ

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