Tully

バタフライ・エフェクトのTullyのレビュー・感想・評価

バタフライ・エフェクト(2004年製作の映画)
5.0
生きることに後悔はつきものだ。やってはいけない事をやってしまった後悔。また、やらなかった後悔。どちらの後悔も、どれだけ悔いたとしても、時間を元に戻すことは出来ない。それでも過去に戻れるのならば、人は、迷わず時を越えてしまうのだろうか。知ることで変わることもあれば、知らない方が幸せなことだってある。少年時代から、何度も一時的に記憶喪失となるブラックアウトに見舞われていた彼にとって、失われた記憶の中の真実を突き止めたいという気持ちはわかる。「知りたい」という欲求は、人間の抑えきれない心理。だけど、「知る」ということは、それなりの覚悟が必要になってくる。だから、弱い人間は神から、忘れることを、「忘却」を与えられたのかもしれない。だけど、過去も忘却も受け入れられない彼は、何度でも過去に戻る。愛する人を救えると信じて、何度でも。その姿はまるで心の中で、頭の中で、過去にこだわり続ける、現実の人間の姿でもあった。「あの時、こう言っていれば。」「あの時、出会わなければ。」「あの時、迎えに行っていれば。」やっぱり、生きることに後悔はつきもの。だからこそ人は、この一瞬一瞬を大切に生きていかなければならない。過去は自分ひとりで成り立っているわけではなく、数え切れない人々との出逢いで、そしてその人々の人生が、複雑に絡み合っている。だから、その時に自分が悔いない行いをしていたとしても、今の自分が、大切な人が、今以上に幸せになっていたかどうかなんて、誰にも分かるはずがない。「小さな蝶が羽ばたくと、地球の裏側で竜巻が起こる」というわずかな違いが後に大きな結果の差を生む理論、カオス理論=「この世に存在する物質、現象全ては相互作用によって成り立ち、その関係の中では、些細な変化が大きな変化を生む」という考え方に通じている。たとえ同じ経験をしたとしても、同じ言葉を訊いたとしても、人によって感じ方も受け止め方も違う。だからプラスに考える人もいれば、マイナスに考える人だっている。過去についても、考え方は人それぞれ。どう解釈するかも自分次第。時間を戻すという行為は、神にも許されない行為。故に、人は時間を戻すことは出来ない。時間を戻すことは出来ないが、人は自分の未来を描き続けることは出来る。いまこの時を、この一瞬を必死に生きることは出来る。今どう生きるかによって、周りの人も幸せに出来るかもしれない。今のちょっとした些細な出来事が、すべての人々の人生に大きな変化をもたらすのかもしれないのだから。
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