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バタフライ・エフェクトのYYamadaのレビュー・感想・評価

バタフライ・エフェクト(2004年製作の映画)
4.1
【タイム・パラドックス佳作選】

◆パラドックス発生の方法
〈タイム・リープ〉
 →自身の日記を読み返すと、
  精神が当時の自分にスリップ

〈見処〉
①タイム・パラドックスの代名詞
・『バタフライ・エフェクト』は、2004年に製作されたアメリカ映画。本国アメリカで初登場1位を記録。斬新で練り込まれた脚本は、『マトリックス』を超えるオリジナリティ+『シックスセンス』を凌ぐ衝撃作と大絶賛された。
・幼い頃「ブラックアウト」という原因不明で記憶を失う症状に悩まされていたエヴァン(アシュトン・カッチャー)は、精神科医の勧めで日記をつけ始める。
・ある日、13歳となったエヴァンが幼なじみのケイリー、トミー、レニー達と、仕出かしたとんでもない悪戯が彼らの人生を決定付けることになるが、その歳にも、ブラックアウトが発生。
・7年後。大学生になり、長い間ブラックアウトが起こらなかったことを喜び、日記を読み返すと、突然13歳時の記憶が鮮明に蘇り、日記に書かれている時代に戻れる能力がある事に気づく。そして、自分が幼馴染のケイリーの人生を狂わせていた事を知ったエヴァンは、運命を変える事を決意する…。
・タイトルの『バタフライ・エフェクト』は「カオス理論」の一つで、1972年に気象学者のエドワード・ローレンツがアメリカ科学振興協会で行った講演「予測可能性:ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?」に由来。

②「名作」と評価される所以
公開から20年近く経過した現在でも「名作」の誉れが高い本作が評価される所以は以下のとおりだと考える。
◆テーマの斬新さ
・「ある小さな出来事が、後々の大きな出来事に起因」するというテーマは、世界中の誰もが興味を持つであろうもの。日本でも江戸時代から使われる諺「風が吹けば桶屋が儲かる」はまさに、同じ。
・過去にありそうでなかった作品としての斬新性が評価されたはず。
◆プロット(筋書き)の完成度
・タイムパラドックスを扱う作品は、如何にキレイに過去の出来事の伏線を回収していくかが肝要。
・本作の場合は、Good/Bad双方のシチュエーションにて伏線回収していることが印象的である。
◆共感出来る行動原理
・「人は誰でもやり直したい過去がある」に尽きる。
◆余韻を溢れるエンディング
・アシュトン・カッチャー扮する主人公エヴァンの選択によるラストシーンには、大変余韻を与える内容。
・DVD特典映像やYoutubeにて数パターンの別エンディングが観れるが、本編採用のものが最も良いと思う。

③結び…本作の見処は?
◎: 上記のとおり、オリジナリティ溢れる作品。近年ではサブスクリプション配信サービスでは観ることが出来ないが、苦労してでも鑑賞しておきたい。
▲: 人生の分岐路となるイベント自体が鬱になるほど大きすぎ、小さな出来事による「カオス理論」と呼べる代物ではないような…。

④ついでの「余談」
史実にみる「バタフライ・エフェクト」
◆ベルリン壁崩壊
・1989年11月、旧東ドイツ政府が開いた記者会見にて、東ドイツ共産党のスポークスマンが、出国規制緩和を「現時点から」と誤報。
・結果、報道直後に東ドイツ民衆がベルリンは壁を崩壊させたことで東西ドイツ分裂の歴史は幕を閉じ、ソビエト崩壊を含む冷戦の終結につながった。
◆ホロコーストの悲劇
・第1次世界大戦下の1918年、イギリス軍はフランス国土にてドイツ軍と激しい闘いを繰り広げていた。
・イギリスの軍人が、1人のドイツ兵に銃口を向けたが、その兵士は負傷していたため、そのまま逃がしたが、そのドイツ兵こそ、独裁者アドルフ・ヒトラーだった。イギリス軍人の慈悲がホロコーストを招く遠因となった。
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