河

ここに幸ありの河のレビュー・感想・評価

ここに幸あり(2006年製作の映画)
3.4
労働者に関係する政策の失敗、それに伴うデモによりヴァンサンは大臣を辞任し、地元のコミュニティに帰る。おそらく、抗議デモによってエドゥアルド・シェワルナゼが辞任した2003年のジョージアでのバラ革命が発想元にあるんだろうと思う。舞台はフランスで、役者達もフランス語を話すが、ヴァンサンの帰るコミュニティはイオセリアーニの他の映画に出てくるジョージア人と近い描かれ方となっている。ヴァンサンの次に大臣となる人物がデモを主導していたことが明らかになるが、シェワルナゼの次の大統領になるのはバラ革命を主導したミヘイル・サアカシュヴィリだったらしい。

ヴァンサンの友人の部屋に、息子を手に乗せた自分の写真が飾られており、ヴァンサンと彼に関わる女性達の部屋には、豚や牛、猪の絵が飾られている。そして、ヴァンサンを追い出す大臣達は銃で猪や鹿を打つ。そして肉食動物を飼っている。そして、ヴァンサンも次の大臣も、大人であり子供のように描かれていて、母親離れができていない。これらが何かを象徴しているようにあからさまに映されるが、その象徴する内容がいまいちわからなかった。実在する政界の人物を指しているとかなんだろうか。

ヴァンサンはその受動的な姿勢、部屋で化学実験をしている姿、富裕層出身であることなど『素敵な歌と〜』の主人公と共通する点が多い。ホームレスの人々とワインを飲むシーンも反復のようになっている。『素敵な歌と〜』は異文化間での共存が体制により失われていく映画であり、主人公は体制側へと属して終わる。それに対して、この映画は主人公が体制側から降り、原題である『秋の庭園』に共存的なコミュニティを築くことで終わる。『月曜日に乾杯』を見ていないのでわからないが、これら三作品は続き物として撮られていたとかなんだろうか。
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