海り

旅立ちの時の海りのレビュー・感想・評価

旅立ちの時(1988年製作の映画)
3.4
この両親、全てが反体制的な方向を向いているだけで、別にそんなにめちゃくちゃ勝手でもないような気がする。大学進学を要求し、ハードな勉強を強制し、昔で言うとこのロックのような"悪い"音楽の禁止などを子に強いる親は、まあ一般的。ダニーの両親も本質的にやっていることはほぼ同じじゃないか?向いてる方向が違うだけで。

アニーの父は社会に反発する娘に「私や母さんのことは考えたのか?」と言う。アーサーは社会に参画したがる息子に「家族の絆を壊すな」と言う。前者と後者の許容度の違いはどこにあるのか。自分たち親への愛情を我が子に求め、それを利用し、親にとって都合の良いような生き方を規定しようとしているという点では同じじゃないか?

アニーの両親とは違って、ポープ夫妻は犯罪者だから許容されないのか?それなら、例えばこれがどこぞの独裁主義国家での話ならどうなんだろう。独裁主義国家の非人道的な政権への反対運動として、無人であるはずの工場を爆破した咎で国家警察に追われている両親という設定なら、みんな彼らを勝手な親と批判するどころか、むしろ称賛しそうな気がする。

結局、このように生きなさいと縛り付けても、これからは自由に生きなさいと言って放り出しても、どっちにしても親のエゴの押し付けにしかなりえない。それでも、ダニーの両親も、アニーの父親も、子に対する深い愛情を抱いていたらしいことは明らかだし、それをしっかりと子に示していた。とどのつまり、それしかなし得なくて、それさえあれば良いんじゃないのかと思う。
海り

海り