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黄色い大地のNNNのレビュー・感想・評価

黄色い大地(1984年製作の映画)
4.6
赤い駕籠を背負って歩く人々がロングで映し出される。嫁入り行列(?)らしい。寄ると、笑っている男たちの顔が並ぶ。ドキュメンタリーとフィクションの境界に位置する顔、顔、顔~。おそらく、ひとりひとりに役名など無いだろう。その隙間に少女の姿が見え隠れする。匿名の集団から個が炙り出されていくような、そうでないような、揺らぎのある掴みである(登場の段階では、彼女もまたモブか "役" かハッキリしない)。

頭にタオルを巻いた男たちが広場のような場所で飲み食いしている。ある者が「お金をはたいて上等な酒を飲んだよ~♪」といった感じの歌を大声で歌っている。「上手だ」という声に「あいつは歌だけだ」「30過ぎて嫁もいない」という声。「上手だ」と言った青年の任務は民謡の収集らしい。"歌を集める"ってなんか詩的だ。

劇中で流れる歌のことごとくがその土地に根付いた人々の心情をドキュメンタリックにあらわしているような気がしていたのだが、終盤「歌も〇〇を助けてはくれない~♪」と少女の名前の入った歌が流れると、途端に「映画のために作られたものだったのか、、!?」と疑わしくもなってきたりして、再びドキュメンタリーとフィクションの境界に引き戻されたような宙吊り感覚に陥る。

少女の嫁ぎ先が決まり、暗い部屋に連れていかれる。フレーム外から伸びてきた手が赤い布をめくる。その手の黒さ、ゴツさがおそろしく生々しい。

EDで撮影・チャン・イーモウとテロップが流れ、よくよく思い返せば『黄色い大地』もまたある種の『初恋のきた道』であったことに気づく。
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