不在

真夜中の虹の不在のレビュー・感想・評価

真夜中の虹(1988年製作の映画)
4.6
この監督は過程を容赦なくすっ飛ばし、とにかく行為と結果、因果のみを描く。
寄り道なしの一本道、人生という名のロードムービーだ。

主人公には自分の物と呼べるものが一つもない。
車や金は父親のものだし、信仰も持たず、職も家も家族も友人も、とにかく何もない。
最後には着ている服さえ盗んだ物だ。
それ故に強い意志や自我すらも確立出来ず、怪しい強盗を簡単に信用するし、警察にも抵抗しない。
自分の車の幌の閉め方すら分からない男なのだ。
そんな何者でもない男が、一人の女性と関わる内にいよいよ自我を獲得し始め、遂には祖国すらも捨てて旅立つ。
現実的に考えたら彼らの行く末は暗澹たるものだ。
しかし私達がそれを見届けない内に映画が終わるように、未来がどうなるかは分からない。
これまでの彼には確かに何も無かったが、これからもそうだとは限らないのだ。
不在

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