ベイビー

真夜中の虹のベイビーのレビュー・感想・評価

真夜中の虹(1988年製作の映画)
3.7
アキ・カウリスマキ監督の労働者三部作(プロレタリアート・トリロジー)の二作目。内容を知らずに作品を観始めたのですが、タイトルと随分かけ離れたハードボイルドな作風に少々戸惑ってしまいました。

炭鉱が閉山してしまい無職になったカスリネン。彼は自殺した父の形見であるキャデラックに乗り、仕事を求めて南へと走り出します…

労働者(プロレタリアート)作品と言われるだけあって、賃金労働者の悲哀が滲み出ている内容でした。職を失い、財産もさほど持ち合わせていないカスリネン。彼は南に向かう道中で様々なハプニングに巻き込まれ、行く先々で不幸をどんどん背負ってしまうのですか、それでもあまりカスリネンから悲壮感は見られず、ドン底に陥っても彼のマイペースは崩れません。

正直言って自業自得な部分が多いカスリネンの不幸の連鎖。しかしその彼の言動も含め、この負のスパイラルを作り出している原因は、この国に安定した雇用がないことが問題なのだと、アキ・カウリスマキ監督が自国に憂いているよう感じました。

アキ・カウリスマキ監督は本作について「自分のキャリアの中での最高傑作だ」と位置付けているみたいですね。でも僕としては、シュールな画の面白さや画角のセンスは感じられたものの、物語に於ける強引なストーリー展開が少し目立ってしまいました。

正直、これまでアキ・カウリスマキ監督作品をあまり観て来なかったので、僕自身がまだ彼の作品の“らしさ”を掴みにきれていないのが現状です。とは言え、本作の最後に見せるささやかな“希望”は、真夜中という闇に見る虹のような、淡く儚い輝きを感じさせてくれました。

この“希望”こそが、アキ・カウリスマキ監督の“らしさ”っていうものなんでしょうか。それを確かめるためにも、今後もアキ・カウリスマキ監督作品を観てみようと思います。
ベイビー

ベイビー