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砂時計のnatsumiのレビュー・感想・評価

砂時計(1973年製作の映画)
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主人公ヨセフは死ぬ間際の父親に会いに行くため田舎にある怪しげで廃墟のような療養所に行く。そこでは時間は独自に流れ、彼は過去の記憶や夢を行き来する旅に出ることになる。やばかった。セット美術、照明、小道具、衣装、それぞれのシーンの長回しとそれらの繋げ方、映像においての全てのクオリティと情報量に圧倒された。ゴシックホラー、バロック調、ビクトリア朝、ロココ調(詳しくないので推測)などいろいろごた混ぜでこんなの見たことない。正直何が起こってるか全くわからなかったし難解映画は苦手でもこれはなぜか引き込まれたし、意味不明でもホロコーストのトラウマのような無意識にずっと潜む過去から逃げられない恐怖は伝わってきた。終わり方も良かった。「父は死んで良かった。こんなことに苦しむこともないのだから。」(意訳) ストーリー的にはちょっとカウフマンの「もう終わりにしよう。」っぽいというのを見て納得。共産主義下のポーランドで製作されたため上映禁止令が出ていたものの、カンヌに密輸して見事審査員賞を受賞したという話も面白い。(その後ハスは8年間映画製作を禁じられた。)この頃のポーランドポスターの多くはそうだけどポスターもめちゃくちゃイカしてる。

現在35mm.onlineというVODにて多くのポーランド映画が8月末まで無料公開されています。(英語字幕のみ、一部ウクライナ字幕も、という配慮が流石。) 初っ端からすごいもんを見てしまった。しばらくはポーランド映画を満喫します。
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