イライライジャ

砂時計のイライライジャのレビュー・感想・評価

砂時計(1973年製作の映画)
3.2
冒頭の異様な雰囲気漂う列車の長回しから只者じゃない感。ホロコーストの犠牲となったユダヤ人作家ブルーノ・シュルツが書く『砂時計サナトリウム』が原作。
埃まみれの廃墟病院や廃れた街で虚な目をして過ごす人々。奇妙な蝋人形。死者なのか生者なのか。はたまた存在していないのか。夢の中のように心地良く、うなされそうな悪夢的でもある。まるでリンボの世界のよう。
抽象的で何も分からないけど、この幻想的映像美や、圧巻の美術を眺めているだけでこの世界観に陶酔できる。
ただホロコースト犠牲者の精神がどこか遠くへ消えたまま帰ってこれない残酷さを感じた。いやむしろ魂は救われたと言うべきか。