benno

砂時計のbennoのレビュー・感想・評価

砂時計(1973年製作の映画)
5.0
ヴォイチェス・イエジー・ハス監督作品…初鑑賞です…表現し辛い作品ですが…素晴らし過ぎ!!

そして原作は画家でもあり作家でもあるブルーノ・シュルツ『砂時計サナトリウム』…彼はホロコーストの犠牲者でもあります…。

映像そのものもまさに好みで釘付けでしたが…原作者シュルツの世界観にも魅了され…シュルツ全集をポチッと…しちゃいましたっს

冒頭のシーンだけで既に大好き…ෆ* 黒い鳥…怪しい列車…乗客たちは皆輝きを失っています…不気味な音響や不穏な雰囲気が頻り…画角や構図も見事で眼を見張るばかり…そして盲目の車掌が到着を告げます…。

主人公ヨゼフは荒廃した墓地を通り抜け…聳え立つ朽ちた巨大な建物の療養所へ…身長の3倍もの高さまである大きな扉をゴオオオ~!! しかしそこは壁、仕方なく窓から侵入…。

とにかく衣装、セット、美術全ての素晴らしさに陶酔…退廃的で蜘蛛の巣だらけの療養所内ですが美しい…テリー・ギリアムやジャン=ピエール・ジュネの幻想の世界をよりアーティスティックに妖気を漂わせたヴィジュアル…。

そこは何やら瀕死の患者の時間を後退させ回復の可能性を探る…という摩訶不思議な時間治療を行っている療養所…ヨゼフの父はそこでは辛うじて生きていますが…俗世では既に死んだ存在らしい…。

そしてヨゼフはふと窓の外を…そこに自分の分身を見つけます…分身は自分が入れなかった大きな扉をルドルフという少年に導かれ難なく中へ…その扉の向こうとは過去の世界…

現在の自分と過去の自分が交錯…ふたつの時間を並行的に捉え、過去にそのままの姿で誘われていきます…。

過去と現在…妄想と現実…シュールな世界に耽溺…。

ベッドの下に潜り込むと…そこも時空を越える境界線…過去では溌剌とした父親の姿が…そしてヨゼフを溺愛する母親…召使のエロいアデル…友人のビアンカ…個性豊かな人物との再会…。

しかしどの人物も実在しているのか…?? 夢のように存在感も希薄で不条理な世界が広がります…そして無限地獄の迷宮のように奥へ奥へ…輪舞の世界の繰り返し…。

蝋人形の館はヤン・シュヴァンクマイエルの世界…倒れた人形の顔がガシャ~ン!! 目玉が飛び出し赤い血が流れます…かと思うと「アブラカタブラ」で動き出す人形たち…何ともシュール…。

そして、出てくる女性がほぼ例外なく胸をはだけていてフェティシズムの側面も垣間見え、とても耽美…。

書けば書くほど分かりにくくて(>ㅁ<` )ゴメチャイ…明らかにストーリーを追う作品ではなく…映像と共に浮遊感を愉しむ作品です…。

そして、ヨゼフは迷宮を抜け出せるのでしょうか…?? シニカルですがラストは……を連想しますっს


thanks to; ゴリアテさ〰︎ん∗✼∗ᖙ☻ᖚ☻∗✼∗
benno

benno