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砂時計のnyakoのレビュー・感想・評価

砂時計(1973年製作の映画)
4.3
ポーランド映画です。

幻想的な映像が流れ…
でも実はそれは走る列車の車窓から見えていた景色だとわかる。
車内は薄暗くて疲れ切った人たちでひしめきあっていて、序盤からただならない雰囲気。
父に会いにサナトリウムへ向かっていた男はすでにこの世界に取り込まれていたんだろうか。

たどり着いたサナトリウムはまるで朽ち果てた古城のよう。
青みががった色彩のゴシックホラーのようでもあったり、カラフルに色を帯びた世界になったり、
どこもかしも朽ち果てているのにシュールなアートを見ているかのようで、隅々まで計算されてる美しさ。

物語で何遍も登場する女の子がちらりなエロシズムに満ちててドキドキさせられるのもとてもいい。

死んだはずの父の時間は戻されていて、
サナトリウムにいたはずなのにどこかへくるくると変わり続ける舞台。
それは潜り込んだベッドの下や、乗り越えた塀の向こう側。この違う世界への導入が、まるで睡眠中の夢の中のような場面の飛躍。
いつまでもこの魅惑的な映像に耽溺していたい気持ちにさせられる。
現在と忘却されない過去がいつまでもこのサナトリウムには混在して生き続けるのかな。
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