シンタロー

誘惑のシンタローのレビュー・感想・評価

誘惑(1957年製作の映画)
3.8
中平康監督による群像コメディ。銀座で洋品店を営む杉本省吉は、一人娘の秀子とやもめ暮らし。向かいの喫茶店で"丘を越えて"を聞き、接吻もできないまま別れてしまった英子との初恋を思い出す。省吉は店の二階を画廊に改装中で、秀子は友達と楽しんでいる前衛生花の発表会に、この画廊を使おうと考えていた。洋品店で働く竹山順子はいつも素っぴんで無愛想だが、密かに省吉に想いを寄せていた。一方、省吉を保険に入れようとしていた秀子は、生花教室で知り合った保険外交員の園谷コト子を紹介してしまい、2人は接近。さらに発表会の資金調達のために画家グループのちょっとシニカルなイケメン・松山小平や、不潔な変わり者・田所草平と手を組むことになり…。
日活で群像劇といえば、中平康と川島雄三かな、と個人的には思ってます。オープニングの音楽、ダンスから心躍る感じ。最初の父娘の朝食シーンから可笑しい。"Life is sex! Art is money!"と声高々に宣言する秀子…この髪型とワンピースは何なんだ?娘の友人をグラマーだとか平気で喋れる関係性が愉しい。省吉の洋品店がまた粋で、造りも陳列もおしゃれ。この時代の銀座行ってみたくなる。前衛生花ってのも、何かとんでもなくてビックリ。飛び交う会話中、心の声が聞こえてくる楽しい演出、挿入される回想シーンも素晴らしい。まるで日本映画ではないかのような、おしゃれで軽やかなタッチがとても楽しかったですけど、この内容にこのタイトルは…よくわからなかったです。
キャストの配列順はさておき、メインは杉本父娘と順子、3人の恋愛模様。なんと言ってもファニーフェイスで、溌溂と喜怒哀楽を表現して、躍動感あふれる左幸子のヒロインぶりが素晴らしい!卵の白身パックが笑える。恋愛パートより、父親や仲間達とのやりとりが秀逸。シンデレラ的ストーリーを展開するのは渡辺美佐子。自分でも気づいていなかった魅力を見出され、恋して内側から光り輝いていく芝居が素晴らしい。左もだけど、後のバイプレーヤーぶりを知っているだけに、本作での魅力には驚いてしまう。ベレー帽のモテ親父、千田是也は若干老け過ぎ感ありだけど、左や轟とのやりとり、芝居は流石。後半まさかのファンタジー状態に突入してビックリ。コレは芦川いづみファンはどのように消化したのでしょう…上野寛永寺の回想デートシーンは美しかったけど…かなりぶっ飛んでます。二の腕ムチムチの轟夕起子は、見事なコメディエンヌぶりで存在感を発揮。笑わせてくれました。頭の悪い友人役の中原早苗は、珍妙な台詞回しとお色気を披露。若手時代の二谷英明と宍戸錠もチラッと出演してます。
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