猫脳髄

雨の午後の降霊祭の猫脳髄のレビュー・感想・評価

雨の午後の降霊祭(1964年製作の映画)
3.5
マーク・マクシェーン「雨の午後の降霊術」を原作としたミステリー作品だが、極限まで亡霊映画に接近しているという稀有な作品。わが国でも黒沢清が「降霊 KOUREI」(1999)として映画化しており、こちらは完全に亡霊映画に振っている。

降霊術師を称するキム・スタンレーとその気弱な夫リチャード・アッテンボローが、妻の名声を高めるために企んだ誘拐事件。少女の誘拐には成功するものの、スタンレーの言動は次第にあやしくなり、誘拐事件は思わぬ展開を見せるという筋書き。

夭折したアーサーと言う「息子」を媒介にスタンレーが降霊術を取り仕切るが、彼女は間違いなく狂っているのである。アッテンボローを見据えるまなざしは落ち着きなくキロキロと震え、それでいて確信的な言動で夫をコントロールする。

クライマックスに向けて狂気が加速するなか、最後の降霊会でスタンレーの口をついて出たのは、果たして彼女自身か、それとも亡霊の告白か。狂気の淵を越えて、亡霊が立ち現れる瞬間の恐ろしさを見事に演出した。ゆえに、ミステリーの結末としては難があるものの、亡霊映画としては及第点なのである。
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