ひげしゃちょー

極道黒社会 RAINY DOGのひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

極道黒社会 RAINY DOG(1997年製作の映画)
3.9
エキセントリックな描写が印象的な黒社会シリーズ第一弾とは打って変わって静かで暗い印象を受ける。 登場人物の台詞ではなく風景を使って虚しさや切なさを淡々と描いている。 三池崇史作品では珍しく「動」ではなく「静」で魅せる。 フィルム・ノワールでありがちなベタなストーリーだけど、この作品で面白いのはおばあちゃんの教えを愚直に守って雨の日は外に出ないユウジとユウジとチェンの距離感。 印象的なシーンにこんなのがある。 「昔読んだマンガに、こんなのがあった。独房に長く閉じ込められた囚人は、紛れ込んだ一匹のハエさえも愛おしく思った。そしてある日、そのハエがいなくなった時から、囚人は気が狂い始めた。」 ユージの住む家の軒先で、土砂降りの雨に打たれてずぶ濡れになりながらも、そこを動かずじっと座り込んでぶるぶる震えているチェンを眺めて一言。 「でけえハエだな」 ユージは少年を戸口へ招き入れる。タオルと着替え用のシャツを手にしたユウジを見て、ニッコリ笑うチェンだったが、ユージはそんなチェンに向かって一言。 「媚びるな、お前は犬じゃねえんだ」 普通の映画だったら距離が縮まりそうだけどそれをしないのが三池崇史。 最期の最期に親らしいことをちょっとする。それで終わりだけどそこがニクい。