ボブおじさん

椿三十郎のボブおじさんのレビュー・感想・評価

椿三十郎(2007年製作の映画)
3.0
〝映画にとって賞賛の対極は、批判ではなく無関心だ〟とプロフィールに書いたが、この映画はまさにその典型だろう。

映画史に残る〝痛快活劇〟をリメイクした本作は、見事に映画史から抹消されている。だが、心優しき私は、この誰もが腰が引ける名作リメイクに敢えて臨んだ、その勇気を讃え出来るだけ温かい目で見ることに😊

間違っても〝世界の三船〟と〝世界陸上の織田〟を比べるなんて残酷なことはしまいと心に誓い、長年封印していた録画DVDというパンドラの箱を開けることにした。

〝黒澤明と三船敏郎〟といえばジョン・フォードとジョン・ウェイン、あるいはビリー・ワイルダーとジャック・レモン、はたまたマーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロなどと同様に、単なる監督と俳優の関係を越えた偉大なるパートナーだ。

残念ながら〝森田芳光と織田裕二〟では当然ながら役不足。それは承知の上で、この良くできた脚本のどこを削って何を加えたのかに注目したが…。

この映画は、本当に森田芳光が撮りたかった映画なのか?思い切った全く違うアプローチを期待したが、なまじオリジナルに忠実に再現している為、粗ばかりか目立ってしまう。

唯一、大きく変えたクライマックスの一騎討ちが、これまた最悪で😞

世界で一番有名な日本人監督の黒澤明と、これまた世界で一番有名な日本人俳優の三船敏郎にリスペクトする気持ちだけは伝わってきたのだが😢

見終わってチラついてきたのは、当時絶大な力を持ち本作を企画し、興行収入60億円超えを宣言していた角川春樹の影。おそらく監督の森田は、角川側から脚本のアレンジや演出に対して厳しい条件(制約)を加えられていたのではないだろうか?

それでも歴史的名作のリメイクとそれなりの予算とキャストを与えられたら、映画監督としてチャレンジしたくなる気持ちは理解できるが…。

当初からガッカリすることを覚悟してみた映画なので、作品に対して文句は言うまい。だが、もしもあなたがこの映画が、初めて見る森田芳光作品だったとしたら、これだけは言わせて欲しい。

〝この映画を嫌いになっても森田芳光のことは嫌いにならないで下さい〟😭



〈余談ですが〉
この映画を見終わった後、何故だか無性にセルジオ・レオーネの「荒野の用心棒」が見たくなった😅

いろいろ〝いわくつき〟のリメイク映画だが、監督が自由に撮っていることは伝わってくる。まっ、それはそれで問題なんだけど😅