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ソフィーの選択のひでGのレビュー・感想・評価

ソフィーの選択(1982年製作の映画)
4.0
観たけど、書いていない、書けていない映画をもう一度しっかり観て、書くぞ!シリーズ⓾

人は封印していた壮絶な過去を誰かに話す時、話した後、どんな表情を、どんな仕草を、どんな声をするのだろう。

多分、「ソフィーの選択」のメリル・ストリープのような表情や声になるのだろうか。

「人類感情表現ビジュアル図鑑」みたいなものがあったとしたら、この映画の
メリル・ストリープの演技は、人類代表みたいなレベルのものだと思う。

特に、終盤のあの演技、、映画史上最高に残る神演技!

この映画の大部分は、話の進行役アメリカ南部育ちのスティンゴが下宿先で出会ったソフィーと彼女の恋人ネイサンとの3人の生活が描かれている。

スティンゴが初めてソフィーを見た時、既にその腕に刻印されたナンバーを見ている。彼女がかつて収容所に居たことも序盤に知らさせる。

でも、スティンゴも観客も、彼女の心の根幹部分のとてつもない悲しみと痛みには
まだまだ辿り着けない。

現実の恋愛とそれを見守るスティンゴ(彼はソフィーを特別な眼差しで見続けているのだが)

何か現実味のない3人の生活から、後半、
画面の色彩も少なくなり、ソフィーのアップが青白いフォルムに収められる。

彼女から語られた恐ろしい過去とは、、、

初見で観た時、ソフィーから語られる、
あまりにも残酷な選択に、怯えたし、悲しんだし、いや、観ている側がどうリアクションしていいかを忘れてしまうくらいにショッキングだった。

しかし、その驚きと、映画の大半が使われている3人の日常的な描写が合致しなかった記憶がある。

でも、今回改めて観直してみて、分かったような気がした。

冒頭から差別的で感情的なネイサンを
ソフィーはなぜあそこまで慕うのか、すがるのか、、、

2回目を観て、ソフィーは、ネイサンに漂う「死や破滅の匂い」に惹かれていたのではないかと感じた。
その匂いが魂を失ったソフィーにとって
救いになったのかもしれない。

22歳で南部から出てきて愛も人生も知らない、でも、明日があり、生きるちからがみなぎっているスティンゴとは、歩むことが出来なかったのではないだろうか。

あの事実を知ったスティンゴも私たち観客も、ソフィーにかける言葉を失ってしまう。

生きてほしい、生き続けてほしい、

その言葉さえ、かけるのを躊躇ってしまう

あんなに酷い場面に向き合なければならない母親は、彼女を最後にしてほしいと強く願う。

ちなみに、ソフィーはポーランド人でユダヤ人ではない。
資料によると、ナチスはポーランドの知識人を中心に大虐殺や収容所送りをしている。

「何人だから〇〇だ!」「外から来た外人は排除しよう。犯罪を犯すから。」
そんな思想を放置しておくことで、
また、ソフィーのような母親を生んでしまうのではないだろうか。
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