菩薩

シルビーの帰郷の菩薩のレビュー・感想・評価

シルビーの帰郷(1987年製作の映画)
3.7
母がどんな理由で自ら命を投げ打ってしまったかは勝手に想像するしかないがおそらく「生活」と言うものに疲れてしまったのだろう。一方彼女と瓜二つの叔母は「生活」からは程遠いところに位置し、それよりも「放浪」を理想として生きている。そんな叔母と生活を共にする事になった姉妹、姉は叔母に惹かれるものの妹は彼女を嫌悪し「生活」の中に存在し続ける事を欲する(家庭科の先生の養女にと言うのが象徴的)。社会の中で個として生き続けるには社会の中に存在していなければいけないとの現実、でなければ簡単に「脅威」と認識され排除ないし矯正されてしまうのが常だが、二人は今ある生活に火を放ち敷かれたレールの先を目指す。得も言われぬ強烈なラストカット、「未来は明るいわ」と言う叔母と共に目指すその先は真っ暗闇である。アンゲロプロスもびっくりな洪水、ツァイ・ミンリャンも真っ青な浸水。
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