ノストロモ

WANDA/ワンダのノストロモのレビュー・感想・評価

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)
3.8
70年にこれ一作のみ監督・脚本・主演し、その後50歳手前で病死したバーバラ・ローデンが唯一世に残したもの。バッファロー66に驚くほどプロットが似ている。当時流行のアメリカン・ニューシネマ色が本作も色濃いが、既存の社会に上手く馴染めない一人の女の孤独とやるせなさに淡々とフォーカスする作りは時代に囚われない普遍性を作品に与えている。
炭鉱で働く夫と離婚し、2人の子供の親権も手離した孤独な女ワンダはあてもなく街をさまよい、酒場で出会ったろくでなしのチンピラと、盗んだ車であてのない逃避行に旅立つ。
粒子の粗い16ミリフィルムの質感に、ワンダの金髪や安モーテルのティファニーブルーが映える。
「(自分には)これまでも何もなかったし、これからもない」と淡々と語るワンダの顔は特に明るくも暗くもない。チンピラは最後までろくでなしだったが、それでも自意識の薄いワンダがやっと見つけた止まり木ではあったのかもしれない。しかし案の定彼もまたいなくなり、通りすがりのパーティで寄る辺なく煙草を吸うラストカットの表情は虚無にして壮絶。
一片の光も感じさせない終わりには乾ききった絶望と妙な爽快感がある。
当時ヨーロッパでは評価されアメリカでは全然だったらしいけど、さもありなんの佳作。
ところで主体性のない美人が、男に都合良く流されれば流されるほどどんどん聖性を獲得していくように感じられるのって、何なのだろう。しかも男が小物であればあるほどその度合いは加速する気がする。
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