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ラスト・ワルツのmimagordonのレビュー・感想・評価

ラスト・ワルツ(1978年製作の映画)
5.0
ザ・バンド、最後の祝宴。

ザ・ビートルズの楽曲 "Get Back" にも多大な影響を与えたとされるザ・バンド。酒場からボブ・ディランのツアーバンド、そして全世界へルーツ/アメリカーナの音を広げた存在。スコセッシはインタビュアーとして出演し、バンドメンバーの語りも挟まれるが、基本はライブ映像。演奏を観てこそ彼らの実力を認識できることをスコセッシはよく理解している。そして錚々たるゲスト陣。もう幾度となく語られているが、 "The Weight" でメイヴィス・ステイプルスが入ってくる瞬間、 "Further On Down The Road" でストラップが外れたエリック・クラプトンを見てさっと繋ぎに入るロビー・ロバートソン。この2シーンは特に鳥肌ものだ。ブルースの巨人マディ・ウォーターズや、ニューオーリンズ・ファンクの巨匠ドクター・ジョン等挙げればキリがないが、そのほとんどがザ・バンドの先輩たちにあたるのがすごい。本当に愛され、解散を惜しまれたバンドなのだろう。

優れたライブ・ドキュメンタリーに関してふと気づいたことがある。『ストップ・メイキング・センス』もそうだが、ほとんどカメラが映らないか、映っても後方の影に隠れるように映る。ライブ・フィルムとはやはりライブの臨場感を劇場で追体験するものであり、そのことをスコセッシは早くから意識していたに違いない。奇しくも今年8月にロビー・ロバートソンが亡くなったことで、オリジナル・メンバーで存命なのはガース・ハドソンだけとなってしまった。そんなことに想いを馳せながら聴く "I Shall Be Released" には、どこか天上の響きのようなものさえ感じた。大傑作。
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