穂苅太郎

ラスト・ワルツの穂苅太郎のレビュー・感想・評価

ラスト・ワルツ(1978年製作の映画)
4.5
ウッドストックから始まってU2「魂の叫び」そして最近のビートルズの「ゲット・バッグ」まで音楽ドキュメンタリー数々見てきた。上記に挙げた3本は作品的にも歴史的にももちろん大傑作になるんだが、本作は自分にとってやっぱり別格中の別格。

高校生で2本立て名画座劇場公開を見てからというものVHS、初期のDVD、5.1chが実装されたDVD、よせばいいのにやっぱり見れなかったアメリカでのブルーレイと、我が映像棚には歴代商品がずらりと並んでいる。国内版のブルーレイをどんなに待ち望んだことか。下手すると10年以上待ってたぞ。昨年秋にひっそりと出たのを年末に慌てて買ってようやく視聴。

まあ映像も素晴らしいのだけど、マスタリングはフィルムの粗さとかも含めて丁寧に再現されていてその心遣いがしみてしまう。
そして何より音響だ。棚に並んでいるそれぞれの商品こすり倒しているので愛着はもちろんあるのだけど、もう多分二度と再生はされないだろうなと思うぐらい素晴らしい。段違いである。
ライブは音をクリアにすると臨場感は出ないし、臨場感を出そうとするとオーディエンスマイクの回り込みが全体をボケさせてしまってあまり良くない。非常に難しいと思うのだけど、これは多分最適解。特に低音の処理が臨場感があって、上物は割とクリアにしているがLINE臭くはない。奇跡的だ。

付属の萩原健太先生の解説リーフレットも素晴らしい。何でマディウォーターズの時だけワンカメなのか、何でポールバターフィールドの時だけピンスポット1台なのかよくわかった。あれ演出効果じゃなかったのな。事故だったんだ。でもどう見ても演出にしか見えないじゃないか。やっぱマーティン・スコセッシすごいや。構成も改めて舌が胃の辺りまで行っちゃうぐらい巻いちゃったし。

一見ランダムにインサートされるインタビューの受け答えと楽曲とザ・バンド自体の歩みや、メンバーの思惑も全部きれいに絡み合いながらシンクロして再現されていて。こんなんできるんだな。映画監督ってすげーや。
穂苅太郎

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