Omizu

若者よなぜ泣くかのOmizuのレビュー・感想・評価

若者よなぜ泣くか(1930年製作の映画)
3.8
【1930年キネマ旬報日本映画ベストテン 現代映画第2位】
『陸の王者』などの牛原監督が佐藤紅緑の小説を映画化した作品。鈴木傳明、田中絹代が兄妹を演じている。この年のキネ旬は現代映画と時代映画にベストテンが分かれ、それぞれ3作品のみ選出というイレギュラーな形になっている。

まさかJAIHOで配信されるとは。2時間40分と長いためなかなか手を出せなかったが観てよかった。社会派映画として一級品の作品。

政治家の裕福な家族の愛憎劇が主題かと思いきや、やがて報道や社会の汚職を描く物語になっていく。歪んだ現実と理想との間で揺れる新聞記者、そして主人公たち。彼らをモダンな手法で描いていく。

揺れるカメラ、斜め下からのアングルなど演出にも新味があり観ていて飽きない。たたみかける繰り返しのショット、水に反射する人物など撮り方としてオシャレだなと思うところが多々あり。

最後は正直キレイにまとめすぎだとは思ったが、苦しみをありありと描いた社会派ドラマとして見応えがある作品だった。牛原監督のモダンな映像感覚も特筆すべきものがある。
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