beachboss114

25時のbeachboss114のレビュー・感想・評価

25時(1967年製作の映画)
5.0
巻き込まれ型サスペンスならぬ、巻き込まれ型戦争悲喜劇。

地元ルーマニアで、嫁にちょっかい出そうとする警察署長にハメられ、ユダヤ人扱いされて強制労働に送られたキリスト教徒が、ユダヤ人と一緒に脱走してハンガリーに逃げたものの、支援団体からユダヤ人じゃないという理由で見放され、その際のお詫びにもらった金の腕輪がロシア製だったもんだから職質でスパイ扱いされ、今度はハンガリー人としてドイツの労働キャンプに送り返されるんだけど、そこでナチの将校に認められ、純粋アーリア人の見本として軍服着せられてプロパガンダに利用される。で、最終的にドイツが負けたら戦犯として裁かれるという、ちょっとした『私は貝になりたい』な展開に。

あまりに出来すぎで、ぶっちゃけ「んなアホな」って話なんだけど、これが物語が転がり始めると一気に最後まで見てしまうんですわ。ここまで波瀾万丈に振り回したら、もはや寓話として許せるレベル。むしろ、連ドラ向き。欧米版『どてらい奴』(知らんか?)。

駆け足でサクサク飛ばしてくれるので見やすい反面、リアリティに欠けるのだが、IMDBで調べたらオリジナル版は3時間だったらしい。ところどころ話がつながらなかったのは、そのせいか。

主人公は、図体デカくて粗野だが純粋で楽天的で前向きな男(喩えるなら、見た目ジャイアンなフォレスト・ガンプ)。愛する妻のもとに帰ることだけを夢見て戦時中を一途に生き抜く姿が、コメディとは言わないまでも、どこかホンワカとしたノリとタッチで描かれていく。

それだけに、新聞記者に何度も笑顔を強要されるラストが辛すぎて、ハッピーエンド(?)なのに胸に迫る。他人事じゃない怒りさえ沸いてくる。このラストカットの表情のためだけにでも、見ておくべき映画と言っていい。
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