いろどり

ココシリのいろどりのレビュー・感想・評価

ココシリ(2004年製作の映画)
3.9
チベットカモシカの密猟者vs山岳パトロール隊の男臭い映画。雪山での攻防は銃の撃ち合いではなく密猟者のボスの追跡がメイン。命がけの執念は凄まじく、寒い寒い雪山の雪が溶けてしまうほど熱い男の闘いだった。パトロール隊の隊長は2代に渡り密猟者に殺害されている実話。この隊長を演じた俳優の圧倒的存在感が作品に重厚感を与えていた。

海抜4700メートル(!)の怖さを思い知る数々の恐怖体験。全力で走ったら肺気腫になってしまうのも怖いけど、体が縮み上がるほど怖かったのは砂漠化が進む流砂での砂地獄。歩いていたらいきなりポスッと足元に穴が開き、ずるずると砂に呑み込まれ、一瞬にして跡形もなくなってしまうところは本当に恐怖だった。

チベットカモシカは1980年代の高級毛皮の欧米需要により、密猟で100万頭が1万頭にまで減少したという(調べるといくつかの記事では100万頭ではなく20万頭とあり真偽不明)。パトロール隊に政府の補助はなく有志によるボランティアのため資金難に陥り、没収した毛皮を闇で売ることで活動資金を得るというのはなんとも皮肉な話。

カモシカの死骸に群がるハゲワシ、チベット仏教の鳥葬、ドレッドヘア、まさかのキャバクラ(水商売)などチベットの文化や生活も垣間見ることが出来て良かった。キャバクラの女性は普通に洋服を着ていて、お酒のコールがキャピキャピしていて面白かった。


新疆ウイグル自治区とチベット自治区の間に位置するココシリと呼ばれる秘境。ココシリはチベット語で美しい山、モンゴル語で美しい娘を意味する。

厳しい自然環境において命はあっけない。資本主義の前では命は軽い。善悪が混在した多くの矛盾も、吹き荒れる吹雪が消し去ってしまうようだった。
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