【説明】
癌を患った男が自分の余命を全うすべく様々な障壁(主に救命至上主義の医療)と闘う姿をコミカルに描いた伊丹映画
過度に延命を試みる終末期医療に異を唱える、挑戦的な内容にもなっている。
wikiによれば「台湾で成功大学教授の趙可式(女性看護師でもある)が本作の中国語版を全国会議員に見せて延命措置中止などの法整備の必要を説いて回り、2000年に安寧緩和医療条例が制定されている」とのこと。
【感想】
1990年代に蔓延していた延命至上主義、パターナリズムの医療に警告を鳴らす作品だったと思われる。(現在となっては主流になりつつあるが…)「自分らしい最期を迎えたい」という伊丹十三の死生観が大いに投影されている。
毒々しい色をした抗がん剤、造影検査や手術の物々しいBGMで、"父権的な医療"を過剰かつコミカルに描いている。この頃は癌の診断を患者本人に伝えないなんてこともあったのか…恐ろしい。
屋上の夕景やその後の三途の川の演出は、サイケデリックで面白い(日本映画初のデジタル合成らしい)。大林宣彦を彷彿とさせる、意図的なチープ感溢れるシーンだった。
最後は主人公と医師の葛藤がアウフヘーベンされた美しいエンディング。般若心経のカンタータは圧巻。