No.1562
2024.01.07視聴
ルコント−19(1999年作)
パリのある橋の上。
22歳のアデル(ヴァネッサ・パラディ)は欄干を乗り越え、セーヌ川に身を投げようと考えていた。男から男へと渡り歩くたびに、捨てられてしまう人生に私はついてない女だと絶望していたのだった。
声をかけたのは、ナイフ投げの曲芸師ガボール(ダニエル・オートゥイユ)
実は彼もまた自殺を考えていた。しかし飛び降りようとする女を見てふと立ち止まったのだ。
奇妙な出会いだ。しかし実はこれは二人に取っては奇跡の出会いだった。
彼は「俺と組んで曲芸の的にならないか」と言う。
ところがアデルはそれを無視して川に飛び込む。おどろいた彼はとっさに川に飛び込み、アデルを救う。
ガボールは直感的に彼女はナイフ投げパートナーに適していると見抜いている。彼女とならついてない二人に運が開けると確信している。彼の説得に、やがてアデルはナイフの的になることを決意する。
アデルとガボールのコンビは行く先々で喝采をあびる。ツキを呼び込んだ二人は、カジノのルーレットでも大勝をするのだが…。
アデルの男癖は治らない。
自分はついていないと思い込んでいる彼女はそれが男癖にあることを理解していない。
ナイフ投げの瞬間に味わっているリスクと快感が彼女を蘇らせていることを知らないのだ。
変な恋愛映画だ。
この映画はストイックな純愛映画と評されている。二人は愛を語るわけでもなく、もちろん手を握ることもない。
考えてみると、私が観たこれまでの彼の作品は、エロチックなようで実は純愛なのだ。のぞき男を描いた傑作「仕立て屋の恋」も「髪結の亭主」も確かに純愛映画だ。
しかしこの映画は、純愛も際立つほどでなく、主人公のアデルを演じるヴァネッサ・パラディにもあまり魅力を感じない。評価はまあまあ普通というところだ。
主人公ガボールを演じるダニエル・オートゥイユは、この後「ぼくの大切な友だち」でもルコントとタッグを組んでいる。こちらのストイックなナイフ投げの役に比べて、軽妙な骨董収集家をコメディタッチに演じていて、なかなかの役者なのがわかる。